研究課題/領域番号 |
19K14241
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
藤田 昌子 愛媛大学, 教育学部, 教授 (40413611)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 性の多様性 / 共生社会 / 家庭科 / 授業実践 |
研究実績の概要 |
本研究は,性の多様性を尊重した共生社会の実現に向けて,高等学校家庭科において,自己の生き方に関する多様性や選択性を含む意思決定の支援を通したジェンダー/セクシャリティに関するカリキュラム開発を行うことを目的としている。令和2年度の主な研究成果は以下の通りである。 1.高校生にとって身近である学校生活や日常生活と関わる制服とトイレに着目して,高校生の性の多様性に対する意識を明らかにすることを目的に質問紙調査を行った。その結果,性的マイノリティのうち,LGBTの認知度について尋ねたところ,約8割の高校生が認知していることがわかった。ただ学年別にみると,1年生は「言葉を聞いたことがなく,意味もわからない」とする人が他の学年よりも多く,認知度が低かった。LGBTの認知度と学年の間には有意な関連がみられ,学年が上がるにつれて,授業などで学ぶ機会が増えることが関係しているのではないかと考えられた。一方で,トランスジェンダーの立場から自校のトイレや制服について考えることができず,2~3割の人は理解不足であることがわかった。また,公共のトイレについても,当事者が直面している困難さを理解できていない状況もみられた。 2.多様なセクシュアリティを扱った絵本(21冊)の分析を行い,絵本を用いた多様なセクシャリティへの理解につながる教育の可能性について考察した。その結果,絵本は,当事者や当事者の家族や友人が抱える悩みや気持ちがわかり,またセクシュアルマイノリティへの理解が無いために,周囲で偏見や差別が生じることにも気づくことができる内容であった。絵本を活用することで,多様なセクシャリティへの理解につながる可能性があることがわかり,どのように教材として絵本を活用していくか具体的な授業実践案やカリキュラムを検討していきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症のため,学校現場で授業実践を行うことができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
①新型コロナウィルス感染症が終息し,可能であれば,当事者をサポートするNPO団体等での聞き取りを行い,現状に即した情報を得たいと考える。そして,最新の資料収集などにより,専門的知識や最新の動向など情報を得る予定である。 ②カリキュラム開発を進める。ただ,新型コロナウィルス感染症が終息しない場合は,学校現場での授業実践は難しいと思われる。 ③研究成果を学会で発表し,意見交換を行う予定である(日本家庭科教育学会等)。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響で,学校現場での授業実践が行えなかった。そのため,授業データ入力等の謝金を使用することができなかった。昨年度のデータ入力についても,新型コロナウィルス感染拡大防止のために,大学にてアルバイトを雇用することが難しかった。また,新型コロナウィルス感染拡大防止のために,学会発表が紙面発表となり,研修等もオンラインとなったため,交通費や宿泊費などの旅費が発生しなかった。 新型コロナウィルス感染症が収束し,授業実践を行うことができれば,また大学にてアルバイト先を雇用することができれば,授業データ入力等の謝金を使用予定である。学会発表や研修等についても対面で実施されれば,旅費を使用予定である。
|