研究課題/領域番号 |
19K14241
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
藤田 昌子 愛媛大学, 教育学部, 教授 (40413611)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 性の多様性 / 共生社会 / 家庭科 / 授業実践 |
研究実績の概要 |
本研究は,性の多様性を尊重した共生社会の実現に向けて,高等学校家庭科において,自己の生き方に関する多様性や選択性を含む意思決定の支援を通したジェンダー/セクシャリティに関するカリキュラム開発を行うことを目的としている。令和3年度の主な研究成果は以下の通りである。 家庭科教育における効果的な教材開発に向けて,多様なセクシュアリティを題材とした絵本20冊を対象に,セクシュアリティに関する要素の質的・量的分析を行った。その結果,1)出版年は2015年以降が多い,2)原著出版国は海外が多い,3)概要は同性カップルの物語が多い,4)主人公は人が多い,5)主体はセクシュアルマイノリティ当事者が多い, 6)特徴は,①セクシュアリティに関わる文言を使用していない(伝記的な物語1冊を除く),②多様な性(性的指向)のみに特化せずに家族を扱っている,③多様な性を当然のものとして描いていることが明らかになった。 これらをふまえ,家庭科の教材としての可能性は,1)性的マイノリティを特別視して描いていないことで,多様な家族の形の存在を知ることができる,そして家族の形だけに限定せず家族・家庭の多様性を伝えることができる,2)身体の性と性自認に違和感がある主人公や,身体の性と性表現が異なる主人公の気持ちが描かれていることから,制服を取り上げ,制服はトランスジェンダーの人だけでなく,あらゆる児童生徒が直面するジェンダー表現の問題として扱うことができると考えられた。課題としては,1)正しい知識や絵本の内容を正確に読み取る力が教員に必要となること,2)翻訳本が多いため,原著出版国の社会的背景や文化等の理解が必要となることが挙げられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症拡大防止に伴い,学校現場での授業実践を含む教育・研究活動に様々な制約が生じたことが影響し,当初の計画の通りに実施することが困難であったため。
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今後の研究の推進方策 |
①令和4年度に採択・供給が開始された高等学校家庭科の教科書について,その収集と記載内容の調査・分析を行う。 ②カリキュラム開発と授業実践を行う。ただ,新型コロナウィルス感染症が終息しない場合は,学校現場での授業実践は難しいと思われる。 ③研究成果を学会で発表し,意見交換を行う(日本家庭科教育学会等)。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響で,学校現場で授業実践を行うことができなかった。そのため,授業実践前後の質問紙調査のデータ入力や,生徒が記入したワークシート等のデータ入力の謝金を使用することができなかった。また,新型コロナウィルス感染拡大防止のために,学会や研修がオンラインとなったため,交通費や宿泊費などの旅費が発生しなかった。 新型コロナウィルス感染症が収束し,授業実践を行うことができれば,大学にてアルバイトを雇用し,授業データ入力等の謝金を使用予定である。学会発表や研修等についても対面で実施されれば,旅費を使用予定である。
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