研究課題/領域番号 |
19K14242
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
袴田 綾斗 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 講師 (50824215)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 数学教育学 / 数学教授学 / 教授人間学理論(ATD) / 教師教育 / 教員養成 / 探究 / 省察 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,数学教師の省察における数学的知識と教授に関する知識の相互作用の様相を記述する理論的枠組みを構築すること,また,数学教師の専門的知識の形成過程における数学的知識の機能を考究するための研究方略を開発することである。 研究の遂行にあたっては,省察における知識の表出を捉え,知識間の相互作用を分析するために,数学教育学における「教授人間学理論」を援用し,その理論の特徴である知識の記述枠組みを用いる。構築した理論的枠組みによる省察の分析と枠組みの検証・修正を往還することにより,精緻な枠組みの構築と定式化された研究方略の開発が可能であると考える。 令和3(2021)年度は,昨年度に得られた新たな視点に基づき,大学生を対象とする教授実験を実施することができた。その新たな視点とは,「探究」という学びの在り方に注目するものである。教科教育の研究においては,例えば数学を学ぶ時など,ある学問や教科の内容(学問領域を跨ぐ場合も含まれる)に関する探究が研究対象となる場合が多い。しかし,「教師が探究をどのように指導・支援するべきか」,また,「そのためにはどのような知識が必要か」といったことに関する知見は蓄積されていない。 そこで本研究では,数学教師,あるいはそれを志望する学生が数学的探究を行い,さらにそれを指導者・支援者の立場から省察することを通して,探究指導に必要な知識を捉える,という一連の活動を設計し,その活動全体を理論的な視点から分析することを行う。教授人間学理論ではこれらを記述・分析するための概念も用意されており,それらの概念をツールとして教師教育や教員養成において実際に教師や学生に利用させることで,実践を理論の視点で省察することができる。本年度は,教授実験として確率・統計に関する探究活動を教員養成課程の学生に実施し,その結果の分析から得られた成果および知見を国内の学会で発表している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3(2021)年度は,育児休業の取得に伴い半年間の研究中断期間があったこと,また,新型コロナウィルスの影響も依然として続いていたことから,当初に予定していた研究の進捗が得られず,また,研究成果の発表の場(特に国際会議での発表の場)はほとんど得られなかった。 一方で,教授実験の計画と実施は昨年度に引き続き滞りなく行うことができた。その実験の結果,前年度までに得られていた成果に加えて,新たな理論的概念を用いたデータの分析を進めることができた。令和3年度末時点での研究成果の公表機会は得られていないため「やや遅れている」としているが,令和4年度にはこの成果を国際会議の場で報告することが予定されている。
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今後の研究の推進方策 |
収集したデータの分析とモデルの検証・精緻化を進めつつ,前年度に実施した探究活動の教授実験とは異なる領域での実践についても計画を進めていく。また,研究の最終年度となるため,研究の成果の取りまとめを行い,学会発表や論文投稿を通して成果を公表することも進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3(2021)年度は,育児休業に伴う研究の中断が半年間あったため,次年度使用額が生じた。 令和4(2022)年度には,会話データの分析のための文字起こし(トランスクリプト)費用,国際会議への参加費用,また,論文の投稿費等に充てる予定である。
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