令和5(2023)年度は,昨年度に続き,数学科の教職免許取得を希望する大学生を対象とし,探究型の学びを実現し,さらにそれを指導者・支援者の立場から省察するための教授実験を計画・実施した。 ここで探究とは,ある問い(学習者が自ら設定することもあれば,何らかの形で与えられることもある)に対する答えを得るために,利用できるものは必要に応じてなんでも利用し,その中で関連知識が学ばれていくような活動を指している。探究的な学びは,近年,教育実践および教育研究において注目されている。これに関する本研究の独自性は,探究においてどのような知識が学ばれ得るのか,それはどのように学ばれ得るのか,そしてどのようではないのか,といった知識論的(認識論的)な視点を中心に据えていることである。また,それを記述・説明するための理論的な枠組みを採用していることも重要な点である。 最終年度である本年度は,昨年度までの研究を継続し,確率・統計の知識が生じるような教材を用意し,それを用いた教授実験から得られたデータを質的に分析した。その結果,推測統計における仮説検定の考え方が自然に発生し,区間推定を含む確率・統計の関連知識が動員されていることを記述することができた。また,ベイズの定理を利用したベイズ更新の知識にも触れることができるということを確認できた。この分析結果については,国際会議で成果報告に基づき,外国の研究者と共同で論文の形でまとめることができた。
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