研究課題/領域番号 |
19K14244
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
山田 洋平 島根県立大学, 人間文化学部, 准教授 (60735687)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会性と情動の学習 |
研究実績の概要 |
本研究では,特別な教育的支援を必要とする子どもの社会性を育成する「社会性と情動の学習(SEL: social and emotional learning)プログラム」の実践的介入効果を検討することであった。 今年度は,公立高等学校1~2年生を対象に学級で行うSELプログラム(以下,学級SEL)を実施した。そのうち,支援ニーズのある生徒を3名選定し,個別のSELプログラム(以下,個別SEL)を実施した。学級SELの実施内容については,1年生に「意思伝達のスキル」「聞くスキル」「自己感情のコントロール」の全3回,2年生に「自己感情のコントロール」「問題解決スキル」の全2回を実施した。一方,個別SELについては,個別のニーズに応じで2~3回実施した。そのうち,高校1年生徒Zの実施内容は,「自己認知の理解」「適応的な思考」「他者視点取得」の全3回を実施した。 学級SELと個別SELの全6回を実施した生徒Zについて,SDQ尺度の教師評定とアセス尺度の自己評定による前後比較を行った結果,教師評定によって生徒Zのネガティブな行動が改善している様子が見られた。自己評定では,生徒Z自身が教師のかかわりが支援的になったと感じていることがうかがえた。一方で,非侵害的関係と生活満足感については,得点の低下がみられた。この結果については,個別SELを通して,自分の学校生活に対する認識が変化してきている可能性がうかがえる。ただし,変化する認識に対する具体的な解決策やそのスキルについては,まだ介入が不十分な点であったため,認知面の変化が得点の減少として表れた可能性がある。 今年度の実践では,支援ニーズのある生徒の学級の変化は見られなかったが,教師の視点から見た行動の変容が見られたことは意義深い。また,肯定的な変化ではないが生徒自身の自己認知が変容している点も価値があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,1)自閉症傾向の特性をもつ生徒へのSELプログラムの実践的介入効果の検討と,2)その他の発達障がいの特性をもつ生徒へのSELプログラムの実践的介入効果の検討の2点を目的としている。 当初計画では,今年度に,1)自閉症傾向の特性を持つ生徒への介入を実施する予定であったが,1)2)ともに対象者が集まり,実践的介入を行うことができた。一方で,当初計画では各生徒に対して,1~2年生での学級SELを全3回,個別SELを全6回実施する予定であったが,実際は学級SEL2~3回,個別SEL2~3回の実施となり,個別SELの実施が少なかった。 このことから,今年度は予定よりも実施回数が少なかったが,本研究の目的をある程度達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初は1年ごとに支援ニーズの異なる生徒を対象に個別SELを実施して,その介入効果を検討する予定であった。しかし,今年度の段階で異なる支援ニーズを持った生徒を対象に,実践的介入を行うことができた。その一方で,支援ニーズを持った生徒に対する個別SELの実施回数が少なかったため,十分な効果が示されなかった生徒もいた。 来年度は今年度の研究対象者に継続的な個別SELを実施し,その効果を検討することにする。なお,継続的な介入を行う対象者以外にも新規の研究対象者を集め,学級SELと個別SELの実施を並行して実施する予定である。 ただし,実施回数を含めた実施内容については新型コロナウィルス感染症への対応などにより,実施協力機関である高等学校の臨時休校などの状況によって,変更することが考えられる。
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