研究課題/領域番号 |
19K14247
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
寺田 佳孝 東京経済大学, 全学共通教育センター, 准教授 (50705960)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 政治教育 / ドイツ / 政治・経済問題 / トルコ系 / 民主主義とイスラーム / 教科書分析 / 差別と偏見 |
研究実績の概要 |
本年度に実施した作業は、大きく次の3点にまとめられる。 第1に、昨年につづき、経済問題の学習を含むドイツの政治教育の実態がどのように展開しているのかについて、同国の政治教育学者の理論、および政治の教科書の分析を実施した。その結果、同国の政治教育(あるいは教育全般)に関し、新型コロナウイルスによる影響のもと、おもに家庭環境に由来する学習機会の不平等、学びの格差の拡大が問題視されていること、また2015年以降の難民・移民の増加も相まって多文化社会における政治・経済・社会問題が主要な学習課題として登場してきていることを明らかにした。 第2に、ドイツの政治教育の視点が、日本の政治・経済問題の教育を考える際にどのように分析され、扱われてきたのかについて、両国の政治教育の発展を比較・分析した。その結果、政治・経済問題を積極的に政治教育の中に取り入れていったドイツに対し、戦後初期の社会運動への反動として、政治的なものを教育のなかから排除していった日本の政治教育の特徴が明らかになった。 そして第3に、ドイツの政治教育に関し、同国で暮らす外国にルーツを持つグループがどのように学んでいるのかについて、さらなる分析を続けた。具体的には、同国で暮らすトルコ系の住民について、どのような(政治)教育を受けているのか、ドイツにおける政治教育についてどのような意見や感想を持っているのかについて、教育を受けている子どもおよびその保護者へのインタビューを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遅れている理由は大きく2点ある。 第1に、最大の理由として、新型コロナウイルスの影響により、今年度に予定していたドイツでの授業調査およびインタビューができなくなってしまったことがある。そして第2に、本テーマに関するドイツにおける研究活動が停滞していることも大きい。新型コロナの流行のため、遠隔授業の可能性やIT機材の開発等が活発に議論されている一方、政治教育をめぐる従来の論点(ポピュリズム、ジュニア選挙等)に焦点が当たりにくくなっている。 以上の状況に関し、以下のような代替案を構想している。 第1に、ドイツでの現地調査の代わりに、政治教育学者の著作を手がかりとした政治教育理論の研究、政治の指導要領および教科書の教育内容を中心に分析を進めてきた。そして第2に、経済問題の教育を分析する際、政治・経済的に難しい立場に置かれやすい移民の背景を持つ人々の存在に注目するため、ドイツ在住のトルコ人に対するインタビューをおもにインターネットを通じて実施している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究に関し、政治教育のなかでの経済問題のカリキュラム、経済問題を含むドイツの政治教育の教授法・授業展開については、一定の分析を終え、著書・論文として発行している。最終年は、以下2点を明らかにすることを目指す。 第1に、ドイツの経済問題の教育の課題として、現在浮上している社会的な格差の問題を明らかにするため、政治教育学者の論文を検討する。この点に関し、移民・難民問題のカリキュラムについて、教科書および具体的な教材の分析を行う。 第2に、政治・経済問題を考える際、ドイツにおける移民の背景を持った学習者の学びについて明らかにする。この点、すでにトルコ系のドイツ人に対するインタビューを開始しているが、この作業をさらに進め、より多くの移民の子どもたちの政治教育の実態およびかれらの意見を聞きとっていく。同時に、かれらが使用している教科書の教材分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスにより、ドイツへの渡航調査ができなかったことが次年度使用額が生じた原因である。今年度は、可能であればドイツ調査、難しければ文献調査等を実施する。
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