最終年度は,web調査によって小中学生の教科に対する動機づけの傾向を検討するとともに,動機づけを向上させる介入方法に関する検討を行った。具体的には,web調査を実施し小中学生が各教科に対してどのような価値を感じているのかを調査し,これまでの研究と類似した教科間の相関関係を確認した。しかしながら,発達による変化については従来の研究とは異なり差を確認することはできなかった。その理由として,調査の実施方法やサンプルの問題などが影響していたことが考えられる。また,期待価値理論に基づいた新しい尺度を翻訳し,期待やコストの概念を含めて測定する尺度を開発した。そして,その尺度を論文にまとめ,日本心理学会が発行する心理学研究への掲載が決定した。さらに,教科に対する潜在的な態度についても検討をし,潜在的な態度とパフォーマンス等との関連も検討した。加えて,小学生や大学生を対象に価値を高めるための介入についても実施し,有用性を考えることが価値の理解や動機づけの向上に寄与する可能性を示した。 上記の研究を実施するとともに,これまでの研究について統合を行った。初年度から継続して子どもたちが教科に対して感じる価値について質問紙調査やインタビューを通して検討を続けてきた。そして,教科によって感じる価値に違いがあることや学年が上がるにつれ価値が低下することなどを確認した。特に,数学や理科,社会などにおいては学年が上がるにつれて価値が低下する傾向が確認された。 このような価値の理解には,有用性について考える経験などが関連することが想定される。そこで,利用価値介入の手法を用いて学習者の動機づけを高める方法について提案をし,その介入の有効性を確認した。
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