研究課題/領域番号 |
19K14255
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研究機関 | 奈良佐保短期大学 |
研究代表者 |
加藤 慎一 奈良佐保短期大学, その他部局等, 講師 (30825443)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 遡及推論 / アブダクション / 数学的な推論 / 小学校算数科 / プログラミング教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、小学校算数科におけるプログラミング教育の系統的かつ効果的実践に向けた教材を開発し、その有効性を検討することである。この目的を達成するために、次の4つの下位目標;(1)小学校算数科におけるプログラミング教育の困難性の同定と特性の分析(期間:2019年4月~2020年3月)、(2)プログラミング教育における系統的かつ効果的実践に向けた教材の開発(期間:2020年4月~2021年3月)、(3)開発した教材の可能性と限界についての理論的検討(期間:2021年4月~2022年3月)、(4)開発した教材の可能性と限界についての実証的検討(期間:2021年4月~2022年3月)、を設定して、研究をすすめていくことにしている。 2019年度は、(1)小学校算数科におけるプログラミング教育の困難性の同定と特性の分析を行った。方法は、小学校算数科におけるプログラミング教育に関する文献研究、小学校での授業観察および授業観察によって得られたデータの分析である。 分析から、児童がプログラミング的思考を働かせるプロセスにおいて、数学的に推論することに伴う困難が生じることが明らかになった。特に、より意図した活動に近づけるために、試行錯誤しながら継続的に記号の組み合わせを改善するプロセスにおいて重要な役割を果たす遡及推論に伴う困難が生じる。遡及推論は、結果から原因を遡って推論し、新しい事実や他の諸規則、理論の発見など、あらゆる次元における発見にかかわる仮説形成的推論であり、直接には観察不可能な何ものかを仮定するため、結果から原因を遡って推論するときに、推測の飛躍が生じることがある。 また、児童の発達段階によって推論の質が異なるため、児童の発達段階に即して、数学的な推論を位置付けた深い教材研究に根ざした授業の構想と展開が必要かつ重要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小学校算数科におけるプログラミング教育の系統的かつ効果的実践に向けた教材を開発し、その有効性を検討するという本研究の目的を達成するために、2019年度は、(1)小学校算数科におけるプログラミング教育の困難性の同定と特性の分析を行った。児童がプログラミング的思考を働かせるプロセス、そのなかでも特により意図した活動に近づけるために、試行錯誤しながら継続的に記号の組み合わせを改善するプロセスにおいて重要な役割を果たす遡及推論に伴う困難性が明らかになった。 また、児童の発達段階に即して、数学的な推論を位置付けた深い教材研究に根ざした授業の構想と展開が必要かつ重要であることが明らかになった。 以上のように、小学校算数科におけるプログラミング教育の系統的かつ効果的実践に向けた教材を開発するための示唆を得ることができた。 このようなことから、本研究の進捗状況については、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、(2)プログラミング教育における系統的かつ効果的実践に向けた教材の開発を行う。より意図した活動に近づけるために、試行錯誤しながら継続的に記号の組み合わせを改善するプロセスにおいて重要な役割を果たす遡及推論に伴う困難を克服する、かつ児童の発達段階に即した数学的な推論を位置付けた教材を開発する。その際、どの単元のどのような内容にプログラミング学習を位置付けることが適切かつ効果的であるかを検討しながら教材を開発する。
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