研究課題/領域番号 |
19K14256
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
富田 真紀 中央大学, 法学部, 特任准教授 (20708044)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グローバル市民性 / グローバル教育 / キャリア教育 / 国際協力・開発 / グローバル課題・途上国問題 / 測定ツール・アンケート |
研究実績の概要 |
本研究の目的は『開発教育と国際教育の融合を目指し、コンテンツと方法論の両視点から大学教育におけるグローバル市民育成のあり方を考え、効果的な実践モデル及び具体的なプログラムを提案すること』である。また、研究基盤整備のための追加予算では、研究計画を補完すべく『SDGsの理解を通じたグローバルコンピテンシーの醸成』をテーマとし、その学習に有用と思われる補助教材(カードゲーム等)を具体的に開発・提案することを目的としている。 初年度は、グローバル市民育成の観点から効果が期待される学習活動に関する情報収集を行い、クラス内で実践しその効果を定性的に確認した。具体的には、グローバル市民育成を目的としたクラスにおいて2030SDGsカードゲームを実施し学生たちに有用性についてアンケート調査を行った。サンプル数的に多角的な定量分析を行うことは難しかったもののゲーム活動は有意義であった、経済、社会、環境を同時に考えていく必要があることを実感した、初めは自分のゴールしか考えていなかったが、後半は全体のゴールや他のチームのゴールにも目を配れるようになること、行動し交渉し協力していくことでゴールが達成できることを学んだというフィードバックがあり、SDGsのコンテンツのみならず、意識・態度の変化も確認することができた。 並行して、グローバル市民性測定アンケートを作成し、グローバル市民育成を目的とした主体的な学習活動を中心に行う通年のゼミ授業の履修生に対して前期、後期終了時にアンケート調査を行ったところ、特に後期の伸びが大きく、項目としては、コミュニケーション力、チームワーク力、行動力・チャレンジ精神、リーダーシップ力、異文化への興味・適応などに伸びがあることが確認できた。 更に、グローバル市民育成と親和性の高いアクションラーニングやキャリア教育について情報収集を行い、来年度の授業で活用し効果を検証する計画を立てた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたアンケートの作成や授業内での調査の実施は予定通り行えた。更に、SDGsカードゲームを使って授業でその有効性を試してみるなど、追加の研究基盤整備予算を獲得したことで予算枠が広がったため、当初の計画以上の情報収集および研究活動を行うこともできた。 一方で、コロナウイルスの影響で予定していた研究活動が一部実施できなかった。具体的には、3月に行う予定であったカンボジアへの学生引率プログラムを通して、学生のグローバルマインドセットや行動がどのように変容し、学内でのグローバル市民育成を目的とした授業の履修生と比較してどのような差異があるかを検証する予定であった。しかし、カンボジアプログラム自体がコロナウイルスにより中止になったため、実施できなかった。また、3月に海外の学会・シンポジウムへの参加を予定していたものの、中止となってしまい情報収集や実践経験の共有などを行うことができなかった。 さらに、担当クラスは少人数制のクラスを中心としていたため、データ収集は行えたものの定量的な大規模データを収集を行うことは難しかった。今後は、同じ目的で授業や学習活動を提供している他大学との連携も含めたデータ収集も検討していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
20年度もコロナウイルスによる移動制限が続くことが考えられ、学生引率を通して学生の態度や行動の変容を検証することは難しいと思われる。大学の授業は、完全オンライン化が進み、19年度はクラス内で行ったグローバル市民育成を目的とした授業に加え、通常は海外に出向く海外研究プロジェクトも今年度はオンラインで進めている。当初の研究計画にはなかったが、グローバル市民育成を行う上で、双方向システムを用いたオンライン授業と通常のクラスでの教育効果の差異、現地研修に出向かずにオンラインでインタビューや研修を行うことで、どこまで教育効果をあげられるのかなどについて検証していきたいと考える。具体的には、19年度にグローバル市民育成を目的としたクラス内でグローバルコンピテンシーを測定するアンケートを実施しており、今年度も同じアンケートを同様のクラスに実施することで、授業履修後の学生のグローバルコンピテンシーの変化にどのような差異が生じているかを検証できると考えている。そのための新たな情報収集も行いつつ、研究テーマからずれることなく状況に合わせてアプローチを調整しつつ研究を遂行していく予定である。 さらに、グローバル市民育成、つまりグローバル教育とは、自らがグローバル社会とどのように向き合い、社会に参加・貢献していくかを考えることを目的とした教育であり、将来どのように生きていくのかを扱うキャリア教育との親和性が高いと考える。追加の研究基盤整備予算によりキャリア教育についての知見を習得する機会を得た。20年度以降、学内のキャリアセンターとも連携をとりつつ、グローバル教育の中でキャリア教育の要素も取り込んでいくことで、より効果的なグローバル教育の進め方についても研究していきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始時に計上されていた今年度の予算は全て使用した。年度の後半に3年間で150万円の研究基盤整備用の追加の科研予算が採択され、このうち年平均使用可能額(50万円)のうち30万円を繰り越すこととなった。この理由としては、研究基盤整備予算の付与が年度の後半の給付決定であったことに加え、大学からも同額(150万円)が補助費として受ける仕組みの事業であったため、この大学の補助費の方を多く使用したことがあげられる(約50%に相当する70万円を使用)。 追加の研究基盤整備補助金は3年分の予算150万円が一括で受け取れたため、見かけ上、今年度の予算と使用額に大きな差がみられるものの、本科研に紐づけされた予算は追加で給付決定した基盤研究補助費を含めてもほぼ1年分を使用している計算になる。 コロナウイルスによる移動制限次第ではあるものの、来年度以降も通常の科研費、追加の基盤研究費申請で計画していたように、必要物品の購入に加え、国内外での学会発表や情報収集等の研究活動を行っていく予定である。
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