研究課題/領域番号 |
19K14256
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
富田 真紀 中央大学, 法学部, 特任教授 (20708044)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グローバル市民育成 / 異文化適応力 / キャリア教育 / 途上国・グローバル課題 / 測定ツール・アンケート |
研究実績の概要 |
コロナの影響により渡航が制限され、計画通りの研究は実施できなかったものの、研究のアプローチを変更することである程度補完できたと考える。現地研修を伴わない学期内で行われる通常の学内授業を通じたグローバル市民育成に関する研究においては、授業形態に変更(オンライン中心)があったものの、当初から予定していた調査に加え、コロナをテーマにした追加調査を実施することができた。 具体的には、グローバル市民育成を意図した通年の導入ゼミおよび専門ゼミの履修者合計20名に対してグローバルコンピテンシーに関するアンケート調査を実施した。前期は全て、後期も半分以上の授業がオンラインで実施されたが、授業内容はコロナ禍以前のものと同じであった。オンライン授業では履修者間の関係構築に時間を要したものの、一年後の学習成果において2019年度の履修者との明確な差は見られなかった(2020年度の方が高い事例もあり、個人差によるところが大きいと推測された)。 加えて、同じ履修者に対してコロナに関する追加のアンケート調査を行った。対面による交流や留学など物理的な移動の制限により機会が失われたと感じる学生が殆どであった一方で、コロナを機会と捉え、その状況を嘆いていても仕方ない、その状況下で何ができるかを考えていくことが重要、コロナ渦だからこそ得たものもあるという前向きな回答も見られた。コロナによる生活の変化は、それまでの認識を変え、新たな環境に適応する機会であり、グローバルコンピテンシーの一つである異文化適応力に通じると考えられる。現在、これらの調査データを分析しており、結果公表に向けて研究を進めている。 尚、本研究は、当初、海外に引率した学生に対する調査や現地情報取集を通じてグローバル市民育成に対する研究を進める予定であったが、これに関しては引率プログラム自体が全て中止となってしまったため、実施はかなわなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ渦により当初計画していた研究が実施できていないことが大きい。一方で、通常の授業におけるグローバル市民育成に関する研究については、当初予定していた調査に加えてコロナをテーマにした追加調査を実施するなど工夫をしている。また、コロナ禍以前には想定していなかったオンラインという新しい方法を調査の視点に盛り込むことができた。 コロナ禍は変化が速く先が見えずニューノーマルが生まれるVUCAの時代を象徴している。つまり、コロナによって大きく生活が変化したことをどのように捉え適応するかということは、グローバルコンピテンシーの一つである新しい環境に対する適応力、異文化適応力に通じる通じる能力と考えることができる。コロナに関する調査に加えることは研究テーマの幅を広げるものになると考えている。
また、グローバル市民育成にはキャリア教育の要素が強く含まれる。グローバル市民とは語学や異文化コミュニケーション等のスキルを身に着けるだけでなく、グローバル社会の一員として、自らの強み・スキルや環境を活かして、どのように社会に参加・貢献していくかを考えていくことであり、キャリア設計を含む。よって、キャリア教育に関する情報・知識収集や実践を進めるなど、当初の計画を膨らませることで研究の質を担保するよう努めている。 2021年度もコロナの影響は続くことから、当初の計画が実行できない可能性が非常に高い。コロナ禍という状況を逆手にとり、この状況だからこそ見えてくるグローバル市民育成における効果的なアプローチや課題を抽出すること、更にキャリア教育の視点とグローバル市民育成の融合の在り方などについて考え、工夫しながら研究を遂行していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度もコロナの影響は続くと考えられるため研究の変更が求められる。2021年度末までに渡航が可能になれば、当初予定していた海外引率プログラムによるグローバル市民性の変化について研究も進めたいと考えるが、難しい場合はグローバル教育を目指した通常授業における調査を継続していく予定である。加えて、海外プログラムにおいて渡航が難しい場合はオンラインで実施する予定であるため、現地に行かずに、どのようなグローバルコンピテンシーがどの程度向上するのか、効果的なアプローチは何かという点についても調査をしていきたい。 また、2021年度もコロナに関するアンケート調査を続けていく。コロナに対する意識変化、捉え方の変化は時間とともに変わっていくと考えられることから、2020年度と比べてどのような変化があるかという視点でも調査・分析していきたいと考えている。 更に、グローバル市民育成を進めていく中で、どのようにキャリア教育の要素を取り入れていくことが有効か検討していきたいと考える。具体的には、情報収集やスキル習得に勤めるとともに、学生がどのようにキャリアや人生設計をしているか、何が課題となっているかを把握することで、グローバル市民育成の中でどのようにキャリア設計の考え方を盛り込んでいけるか、授業等で試し実践しながら追求していく。
加えて、昨年度、個人的な繋がりの中で新たに多様な業界で働く社会人コミュニティを獲得できたことから、社会人のグローバルコンピテンシーという点でも調査を計画したいと考えている。併せて、オンラインで参加できる研修や学会も増えてきたことから、当初予定していなかったオンラインでの情報収集にも力を入れていくことで研究を補完し発展させていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定額と実使用額に差が生じている理由として、コロナにより渡航が制限されてしまったため研究の進め方そのものを変更せざるを得ず、旅費予算がそのまま繰越になってしまったことが挙げられる。また、若手研究の追加基盤予算の採択により同額の学内予算も獲得できたため、一部の研究活動は科研費にみえない学内予算が充てられている。 2021年度も渡航がかなわない場合は、オンラインでの学会や研修などの情報収集、オンライン会議用のPCやその他周辺物品の購入の他、オンライン調査費用(委託を含む)等にあてていく予定である。
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