州憲法上独立した米国大学と高等教育政策の計画・調整

2019 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K14261
• 研究機関: 九州産業大学
• 研究代表者: 中世古 貴彦 九州産業大学, 基礎教育センター, 講師 (50757656)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: 米国高等教育 / 旗艦州立大学 / 憲法上の自治 / 州高等教育調整機関 / 大学理事会

研究実績の概要

本研究課題「州憲法上独立した米国大学と高等教育政策の計画・調整」は、旗艦州立大学が州憲法による自治を有する6州を対象として、高等教育に期待される公的使命の達成に向けて、大学の強固な自治・自律性と、学外からの公的統制との葛藤がいかにして乗り越えられようとしているのかを、＜憲法上独立した旗艦州立大学＞と＜州全体の高等教育政策の計画・調整機構＞に注目しつつ明らかにすることを目的としている。
当初予定では、2019年度は、対象となる6州の全体的な情報集を行うとともに、以前から情報収集を進めていたカリフォルニア州に対する研究を進めることを想定していた。特にカリフォルニア州においては、前州知事時代に廃止された調整機関を巡る改革議論を時系列に後付ける作業を行うとともに、就任直後の新知事が後続の枠組みを新たな形で設けようとしていることに関する法案の審議状況や報道発表などの情報収集を行った。また、国内外の高等教育関連書籍の収集や、関連分野の学会の大会等で情報収集も行った。
研究開始後の初年度で、また後述の事情もあり、現時点までに、本研究費を用いて新たに行った調査などに基づいた口頭発表や論文はない。ただし、カリフォルニア州や他州に関して得られた情報は、現在並行して作業を進めている米国高等教育に関する翻訳業績の精度を高めたり、完成間近の博士論文を補強する材料としても活用されている。2020年度以降に行う予定であった他州の情報収集も少しづつ進めているが、上記の準備中の業績については、速やかに発表できるように鋭意準備を進めている。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

まず、当該（2019）年度から研究代表者が所属機関を移籍したために、職務内容や研究環境が大きく変化し、研究ペースを若干落とさざるを得なかったことが、理由の一部として挙げられる。
だが、それにもまして、2020年1月頃からの世界的な新型コロナウィルスの蔓延により、様々な業務負担が生じたのみならず、国内外の調査や出張がほとんど不可能になったことの影響が大きい。2020年4月現在でも収束の気配はなく、2020年度以降の現地調査を実施できる見通しが立たない。また、高等教育分野の政策課題も変化しているようであり、さらなる情報収集を行う必要があるが、残念ながら現時点ではそれらすべてに対応できているとは言えない。
以上の理由のため、進捗状況について「やや遅れている」という判断を行った。

今後の研究の推進方策

先述のように、米国の高等教育分野の政策課題に変化が生じているようである。少なくとも最近の報道を見る限り、コロナウィルスの感染拡大防止、遠隔教育の実施、学生支援などにおける喫緊の課題が、本研究が着目していた州調整機関の改革や個別大学に対する州政府の統制といったような従来からの課題を覆い隠している。
このように研究計画段階とは状況が変化しているので、まずは、引き続き動向を注視し、本研究の視点から分析が可能な情報の収集を継続する。
また、当初の計画では複数の州への現地調査を想定していたが、現地の感染拡大・終息の状況や現地で特に注視される高等教育分野の政策課題などを踏まえて、詳しく調査を行う州や機関を変更する、調査時期や順番を入れ替える、場合によっては文献に基づく調査や電子メールやテレビ会議システムを介したインタビューなどに切り替えるといった対応を行いたい。

次年度使用額が生じた理由

先述のように、新型コロナウィルスの世界的な流行により、国内の研究会等への出張はもちろん、米国での現地調査を計画・実施することが当面不可能となった。状況が改善し次第調査を開始できるようにするため、研究費を次年度に繰り越す必要が生じた。