近年、地方大学を中心として、地域人材育成を志向した教育実践が進められている。これらの実践は高い教育効果を上げているものの、その検討は在学生の学習成果を対象とした短期的な効果にとどまっていた。本研究では、調査対象を卒業生に広げ、大学における地域人材育成教育が卒業後の地域活動にもたらす中長期的な教育効果を定量的に検討することを目的とした。 前年度までは、大学の地域人材育成教育の中長期的な教育効果を定量的に検討するために、大学の地域人材育成教育の実践効果に関する先行研究の知見収集や、調査対象である地方公立A大学でのヒアリング調査を行い、定量的調査のための計画を進めてきた。 そして、4年計画の最終年度として、令和4年度は、大学の地域人材育成教育の中長期的な教育効果を検討するための調査を実施した。調査対象としたのは、地方公立A大学の卒後1年から30年の卒業生150名であった。当初の予定では、地方公立A大学の同窓会の場で調査を実施する計画を立てていたが、コロナ禍のため対面形式での同窓会がオンライン形式に変更となったため、電子媒体での調査を行うことになった。また、オンラインでは、多忙な社会人に対して多くの質問項目を提示し回答を得ることは難しいと判断したことから、今回の調査では定量的に測定するための質問項目ではなく、定性的な回答で情報を多く求める調査に切り替えた。調査の結果、卒業生の年代によって大学の地域人材育成教育の効果に違いがみられる可能性が示唆された。本年度に得られた研究成果は現在、学術誌へ投稿準備を行っている。
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