研究課題/領域番号 |
19K14265
|
研究機関 | 新潟青陵大学 |
研究代表者 |
小林 智 新潟青陵大学, 福祉心理学部, 助教 (60806206)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 高等教育段階 / 不登校 / 長期欠席 / 大学生 |
研究実績の概要 |
本邦においては不登校は重大な教育上の問題であると考えられているが、こうした問題に関する研究は従来義務教育段階を対象とするものが中心であった。本邦における高等教育段階への進学率は年々上昇しており、高等教育機関の修学指導の重要性が高まっているにもかかわらず、この問題に関する研究は十分に蓄積されているとは言い難い。本研究課題は、高等教育機関における修学支援に資することを目指し、一連の研究を通じて高等教育機関における不登校(長期欠席者)に関する基礎資料を得る事を目的としている。研究初年度である2019年度では、大学における不登校(長期欠席)研究のレビューを通じて当該領域の抱える課題について考察し、この成果を新潟青陵大学大学院臨床心理学研究に投稿中である。 高等教育段階における不登校研究の近年の潮流として、出席率という行動上の指針からに不登校(修学支援対象)を定めるのではなく、登校回避感情などの心理的反応に着目して、高リスク者の心理的特徴を検討することにより、高等教育段階の不登校研究を推進しようという立場が中心となっている。他方で、実際の高等教育機関における修学支援の取り組みや、その関係者の声を報告する調査研究においては、日々の多量の業務がボルトネックとなって修学支援が十分に実施されていない事が報告されている。こうした現場の状況を鑑みれば、登校回避感情尺度を学生に直接回答させるという実施コストの高さが導入の障壁となる可能性がある。 出席率は単位制度の実質的運用に必須となる教務上の情報であり、日常的に収集されることからスクリーニングを最小限のコストで実施できるメリットを有する。他方で、高等教育段階においてどの程度の欠席を修学支援の対象とすべきかは現時点で明らかになっておらず、効果的な修学支援システムの構築においては、スクリーニングの精度を高める必要性があることを指摘し、今後の課題とした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時点で所属していた研究機関からの異動によって当初計画より遅れが生じている。第一に移動に伴い学内業務に割くエフォートの割合を高めざるを得ず、研究の実施時間を確保することが困難となった。第二に、所属の変更に伴い、研究の実施に必要な修学情報の管理方法に違いが生じ、研究を当初計画と同様に履行することが可能かどうかを再度精査する必要が生じたことが事由である。
|
今後の研究の推進方策 |
進捗状況において報告した遅れを生じさせた事情は解消されつつあるものの、このコロナ禍において高等教育機関における修学の状況も類例の無い変化の渦中にある。当初計画通りの研究を実施することが困難な場合は、過去の修学状況をデータとして使用することで対応することを検討している。一方で、修学の意味が従前とは変わりつつある中で、従前の価値観に基づいた研究がどの程度の意義を持つかを検討した上で、研究計画の変更についても慎重に検討しなければならないと考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗の項で記載した当初計画とのずれによって使用額にもずれが生じた。次年度においては、大学における修学状況に関する研究が、このコロナ禍においてどのような影響を受けるのかを慎重に見極めながら適切な使用を心がけたい。
|