日本の大学院や学術研究をめぐる政策においては個人的経験に基づいた言説や議論が散見される上,文系を除く「科学」分野や,資格系分野に限定された調査・考察が少なくない。本研究では多分野の大学院生や大学院経験者を対象としたデータを収集し考察できた。本課題における各研究で整理された基礎的知見には,博士課程に進学しなかった者は研究自体から完全に身を引きたいと考えていたわけではないことや,大学院生の精神的健康度や卒業後の幸福度を単一の尺度で測りきれない可能性などが含まれる。これらは,日本の学術研究を担う者たちのサポートの必要性の議論や,学術政策に関する社会的合意形成の際に役立ちうるエビデンスだといえる。
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