本研究では,スポーツ推薦入試やAO入試などを経て入学した学生(学生アスリート)を対象としたアカデミック・ライティングに関する学習支援モデルを構築した。2019年度は、大規模総合大学A大学学生アスリートを対象に、レポート執筆の正課外講座と個別指導を行うプロトモデルを開発・実施するとともに、学生アスリートのコンピテンシーなどの学習特性を明らかにした。学生アスリートは、大学入学までの学習経験および大学入学後のスポーツ活動と学習の両立に対する不安や課題を抱えており,個別に目標や計画を立てて学習を進めるより、指導者と双方向でのやり取りを行いながら課題に取り組む学習に適応性を有していた。2020年度から2021年度まで、コロナ禍による学習支援モデル開発およびその評価に一時困難はあったものの、双方向性を担保したオンラインでの学習支援とその評価を行った。2022年度に分析を行ったところ、学生アスリートは授業外講習会等の時間や空間を共有した双方向での指導をベースに、レポート執筆等の具体的な課題に取り組むことで、①ライティング能力を向上させること、➁学習内容の定着と大学における文章作成課題への活用、➂自身のライティング力についての振り返りや自身の知識・技術の向上といった行動が見られるなど、ライティング学習に対する高次の転移が示唆された。正課外講座と個別指導およびレポート作成課題を用いたアカデミック・ライティングに関する学習支援モデルの効果が確認されたことから、2023年度にこれらの成果をまとめ、大学教育学会誌上で公開した。
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