研究課題/領域番号 |
19K14277
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研究機関 | 関西看護医療大学 |
研究代表者 |
高見 栄喜 関西看護医療大学, 看護学部, 助教 (30632731)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 進級阻害要因 / 退学要因 / 初年次資質 / 地方看護学生 / 在学生対象 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、本研究対象者と同じ対象者の中でも、本年度に在学(2~4年生、合計312名)している学生を対象とし、2年次への進級と退学に対する入学時の精神的健康や生活習慣等の関連を検討した。有効回収率は、99.0%であった。 本年度の研究では、標準年次での卒業ではなく、特に在学生の実態を明らかにすることを目的に、進級と退学の観点から調査した。退学には、標準年次での卒業に該当しない者が含まれ、卒業とは異なるが、一部分では、学生の卒業を代用する側面を有すると推測されるためである。したがって、本研究実施計画にない本年度の在学生に限定して対象者を設定し、アウトカムを2年次への進級と、5月時点で退学している者を退学として研究を実施した。従属変数の2年次への進級率は、全体で86.5%(270/312名)、退学率は、全体で11.2%(35/312名)であった。独立変数のストレス度・生きがい度・GHQ12は4区分に、主観的満足度(家族関係)は、3区分にそれぞれ設定した。 本研究の一連の先行研究にない、本年度の研究での新たな知見は、以下の通りである。進級については、精神的健康度の指標であるストレス度やGHQの高い者の方が、2年次に進級できない者が多いことが分かった。また生きがい度が高い者や、家族関係に満足している者の方が、2年次への進級者が多く、進級を促進させる傾向がみられた。一方、退学については、GHQが高い者において退学者が多いことや、家族関係に満足している者の方が、退学者が少ないことが分かった。また生きがい度の高い者の方が、退学者が少ない傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に、本研究課題の調査研究活動が進んでいる。しかし、次年度に向けては、本年度の2・3月より新型コロナウイルス感染症拡大の影響のため、大学の講義が実施できるかが不透明な状況にある。したがって、本研究対象の新入生に対する、調査票の配布や回収などの調査活動が、現状では計画できていない。大学の休講が解除され、講義などで通学する学生等に調査依頼ができる環境が整い次第、次年度の調査研究活動を進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では、地方在住の看護学生の初年次での精神的健康度のGHQが進級と退学との間に、ストレス度が進級との間に、また個人的属性の家族関係(生活満足感)が退学との間に、それぞれ有意な関連があった。一方、精神的健康度の生きがい度が進級と退学との間に、家族関係が進級との間に、それぞれ関連する傾向があった。本年度は、地方在住の看護学生での在学生を研究対象者として研究したため、本研究の目的である2年次への進級に関しては解析できたが、卒業の代用として退学を設定したため、卒業との関連は明らかになっていない。 したがって今後の研究として、地方の看護学生での進級や卒業を阻害および促進する要因とその構造について、初年次での資質(個人的属性と生活習慣、精神的健康度)との関連からさらに解明し、早期からの健康教育や学生支援等を通じて、入学生全員が標準年次で看護師資格を取得し、地方の看護師不足解消に役立つ基礎資料を得ることを課題としたい。また地方の看護系大学選択に有効な看護師適性指標を創出し、適切な入学者選抜に役立てる研究活動を推進させていきたい。 2020年2月以降の日本社会での新型コロナウイルス感染症拡大の影響のため、次年度以降の新入生は、本年度以前の新入生とは異なり、社会経済的側面や身近な生活環境(遠隔授業等)、またソーシャルディスタンスの必要性からの人間関係など、様ざまな変化が起きていると推察される。このような変化が、学生の初年次での資質(個人的属性と生活習慣、精神的健康度)や、また進級や卒業に対してどんな影響があるかという視点も、研究計画に取り入れていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究活動に必須な初年度の物品費が、当初の計画よりも高くなり、年度の途中で前倒し支払い請求をせざるを得ない状況になった。したがって、当初に予定していた調査研究に用いるデータの整理や入力などの費用や旅費が、十分に使用できる環境が整わず、その結果、次年度使用額が生じてしまった。翌年度は、必要機器やツールも揃ってきたので、さらなる研究データを収集し、データ整理と入力、また調査分析や解析に注力し、有効に研究助成金を活用していきたいと考える。
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