本年度の研究目的は、申請研究の対象者の内、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行拡大前の28年度から平成30年度に入学した学生、合計313名(男性88名、女性225名)を対象とし、卒業を規定する初年次因子(精神的健康や生活習慣など)を解明し、標準年次での卒業を規定する要因(促進・阻害要因)を検討することである。従属変数を卒業の有無とし、独立変数に満足度(友人、生活全体)の2区分、朝食習慣、ストレス度、生きがい度、GHQ12の3区分を設定した。ロジスティック回帰分析にて、①卒業の有無に対する各独立変数の影響度合いと、②卒業の有無に対する各独立変数の影響力を、各独立変数での基準群(低値群)に対する各群でのオッズ比で測定した。なお性別、年齢、BMI、喫煙・飲酒習慣(有無)を調整因子とし、有効回収率は99.4%であった。 本年度の研究での主な結果は、①卒業に対して、全体では朝食習慣(オッズ比:2.10)と友人(0.30)、女性では、朝食習慣(3.47)と生活全体(0.13)に規定力があり、判別的中率は、順に73.8%と75.8%であった。②朝食習慣・ストレス度と卒業の有無の関係では、調整後での朝食習慣(時々食べる群)のオッズ比は、0.46(95%CI:0.25-0.86)、調整後でのストレス度(中値群)のオッズ比は、0.46(0.24-0.90)とそれぞれ有意な負の関連があった。 標準年次での卒業には、入学当初の早期から毎日朝食を摂り、スムーズに新しい友人関係が築けるよう、学生の教育環境・心理面などからサポートの重要性が示唆された。我々の先行研究では、コロナ禍後の新入生の生活満足度が高い傾向があった。コロナ禍前後の相違を考慮し、朝食摂取の習慣化や、仲間づくり機会の創出などを通じて、入学生全員が標準年次で卒業し、即戦力の看護師として臨床に輩出できる研究の蓄積が求められる。
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