研究課題/領域番号 |
19K14279
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
白川 展之 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (20556071)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 研究評価 / 業績測定 / 社会科学 / 計量書誌学 / 科学計量学 / イノベーション政策 / 総合知 / 評価 |
研究実績の概要 |
本研究は、社会科学研究者とその業績評価(専門領域の研究者のピアレビュー及び所属大学における昇進・業績評価)を分析範囲とし、大学組織における業績評価と研究者個人の専門家間における評価・評判とのギャップについて調査する。このため、社会科学研究の全体構造を俯瞰的・定量的に分析するために社会科学の論文データを分析する。さらに、この情報を基に、国内外の研究大学を調査対象に、国内外の研究大学における研究業績評価と昇進の実態構造を調査・分析するものである。 本年度は、第6期科学技術基本計画、それに伴う法改正により、人文・社会科学が科学技術・イノベーション政策の振興の対象として包摂される中で、計量書誌学に基づく指標など多様な方法論を用いる研究評価と科学技術・イノベーション政策との関係を分析し、大学の機関としての評価、高等教育政策としての評価、さらに個別の研究プロジェクトを対象とする科学技術政策の評価など、複数府省にまたがる科学技術・イノベーション政策において、制度別に行政評価が行われている分流状況が、総体としての次に何をすべきかを議論する科学技術・イノベーション政策の政策評価を阻害する構造になっており、評価が評価を阻害する逆機能性の存在を明らかにした。 こうした研究成果は、日本評価学会の年次大会の企画セッションとして、「科学技術の評価」について、開催・発表を行った。このほか、特筆すべき事項として同学会誌の初の科学技術政策の評価に関する企画特集号が編纂された。この中に、研究代表者は査読付論文として、科学技術政策のもつ評価制度の矛盾的な問題構造の存在を明らかにする論文を公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまで、社会科学系の論文データの分析結果について、日本で初めて分析のレポート等を研究実施の初年度に刊行してきた。このため、研究についてはおおむね順調に進捗してきたところある。さらに、国際的な調査の実施により、社会科学研究の振興のスタンスが、米国と欧州でも社会的な貢献の観点で大きく違っていることなどを明らかにしてきた。 しかし、今年度については、年度途中に、研究代表者が、所属機関を異動した個人的な要因と、新型コロナウイルスの蔓延により、国際・国内移動の制限が加わった外部要因により、研究の進捗と研究成果の公開に支障が生じた。 研究の進捗については、研究計画で実施を予定していた海外調査が延期となったことから、進捗が芳しくなかった。また研究成果の公開については、所属機関を異動したことに伴い、研究環境が変更となったため、分析結果の公開に関して、データベース利用契約上の法的な問題から、公開に支障が生じた。即ち、異動後も何らかの形で所属等も前任の機関に残すことで、研究成果を公開する措置を講じる予定であったが、新型コロナウイルスの影響で、分析に使ったデータの著作権の問題により研究成果の公開が困難になったためである。 一方、こうした研究遂行上の障害を克服するため、日本評価学会等における企画セッションの実施や、特集号の編集・発行など、これまで日本で実施されていない研究評価と公共政策の関係とそこから生じている問題の構造について、日本国内の研究者と連携を深めながら、研究を別の観点から深めることができ、研究プロジェクトの主要成果として公開することができた。 現在、新型コロナウイルス関連で、機関の制限の緩和を受けて予定していた海外調査の再開の可能性を探索しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者が、所属機関を異動した個人的な要因と、新型コロナウイルスの蔓延により、国際・国内移動の制限が加わった外部要因により、研究の進捗と研究成果の公開に支障が生じたことに対する対応策として、研究計画の練り直しと、再構築を、これまで得られた新たな発見をもとに、科研費の制度変更に対応しながら実施していく予定である。 これにより、研究環境の変化に対応するとともに、共同研究者を加えることで、高等教育政策と研究成果のもたらす逆機能性の研究をより政策的な含意をもたらし、インパクトある形でさらに発展させていけるように、次のテーマの研究計画と現在の研究成果の公開により、最大化させていくこととした。具体的には、研究計画の拡張を通じて、科学技術イノベーション政策のイノベーション論における議論を、広く日本の公共政策一般、行政評価研究のコミュニティに対しても共有・公開することができ、新たな分野融合的な研究の発展のきっかけをつくるような共同研究体制の確立を目指したい。 また必要に応じて、研究期間を延長するなどすることで、予定していた海外調査を実施することとし、当初の研究計画のリカバリーを模索していくこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延にともなう、海外渡航調査が実施できなかったため。
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