本研究は、社会科学研究者とその業績評価(専門領域の研究者のピアレビュー及び所属大学における昇進・業績評価)を分析範囲とし、大学組織における業績評価と研究者個人の専門家間における評価・評判とのギャップについて調査する。このため、社会科学研究の全体構造を俯瞰的・定量的に分析するために社会科学の論文データを分析する。さらに、この情報を基に、国内外の研究大学を調査対象に、国内外の研究大学における研究業績評価と昇進の実態構造を調査・分析するものである。本年度は、第6期科学技術基本計画、それに伴う法改正により、人文・社会科学が科学技術・イノベーション政策の振興の対象として包摂される中で、計量書誌学に基づく指標など多様な方法論を用いる研究評価と科学技術・イノベーション政策との関係を分析し、大学の機関としての評価、高等教育政策としての評価、さらに個別の研究プロジェクトを対象とする科学技術政策の評価など、複数府省にまたがる科学技術・イノベーション政策において、制度別に行政評価が行われている分流状況が、総体としての次に何をすべきかを議論する科学技術・イノベーション政策の政策評価を阻害する構造になっており、評価が評価を阻害する逆機能性の存在を明らかにした。 こうした研究成果は、日本評価学会の年次大会の企画セッションとして、「科学技術の評価」について、開催・発表を行った。このほか、特筆すべき事項として同学会誌の初の科学技術政策の評価に関する企画特集号が編纂された。この中に、研究代表者は査読付論文として、科学技術政策のもつ評価制度の矛盾的な問題構造の存在を明らかにする論文を公開した。このほか、社会科学のみを対象とした研究を人文科学も含めた後継研究課題に発展させたプロジェクトを同時に開始した。
|