研究課題/領域番号 |
19K14286
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
大谷 博俊 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (60420551)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム / ライフキャリア / 能力・態度 / 実践研究 |
研究実績の概要 |
令和3年度は小学校および中学校における自閉症者のライフキャリアの能力・態度指導プログラム案の成果を確認すると共に、日本特殊教育学会でシンポジウムを開催し、研究協力者の助言を得て検証した(10.研究発表〔学会発表〕参照)。研究協力者からは、単にスキルの習得に留まらず、自己分析=理解の契機となる可能性があるという評価を得た。 また、研究協力者の助言を得ながら、構想したプログラム要点を検討した。その結果、ライフキャリア発達支援において、「“時間軸”を明確に位置づける」こと,そして「教員・児童生徒間,あるいは児童生徒同士といった関係性が重要である」ことなど複数の要点を明らかにすることができた。そして、これらの成果は、研究論文「自閉症者のライフキャリア発達支援の要点」としてまとめ、発表した(10.研究発表〔雑誌論文〕参照)。 さらに、これらの要点の活用を検討するために、専門職学位課程の大学院生との共同研究を行った。ライフキャリア実践事例を分析することで、小学校高学年における「時間軸を明確に位置づける」、「物理的な環境(例えば,教材)に加えて,人的な環境(例えば,教員の指導言)にも配慮する」「教員・児童生徒間,あるいは児童生徒同士といった関係性」等要点の、具体的な活用例を検証することができた。そして、これらの結果は、研究論文「特別支援教育におけるライフキャリア発達を支える実践の検討―教職大学院における教師教育の充実を目指して―」としてまとめ、発表した(10.研究発表〔雑誌論文〕参照)。 ところで、これらの指導プログラム等の作成・検証は、義務教育段階の児童生徒を対象としたものに留まっており、実践に対する専門家からの意見聴取や評価についても、当初の計画通り進んでいない。令和3年度は、ようやく学会での関連シンポジウムを開催し、オンラインによる助言も得ることはできたが、まだ緒に就いたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度までの成果に基づき、教職大学院の授業科目である「教育実践研究」を中心に、義務教育学校、高等学校あるいは特別支援学校高等部でのプログラム効果を確認することを想定していたが、高等学校段階での実践協力先を確保することが難しく、義務教育学校で実施した事例の検証に留まった。また、新型コロナウイルス感染症者が大学内でも散発的に発生し始めたことにより、大学での授業形式が度々変更となり、自閉症スペクトラム症者のライフキャリアの能力・態度指導プログラムに関わる院生とのディスカッションなどにも支障が大きかった。このような状況の中、先のプログラムに関わる実践研究のために、新たな授業形式であるオンラインに関わる自身の技能向上、オンライン機器の整備などに並行して取り組んできたため、効率は決してよいものではなかった。 このように、令和3年度研究に着手することの困難さや、適切に実践研究を進めるための協力先確保、そして研究に耐えうる実施方法の確立に時間を要し、進捗に遅れを生じた。また、実践成果を精査する、助言を得る等のための、学会等発表や研究会等は、始めることができたとはいえ、緒に就いたところであり、現段階ではプログラム成果の検証が十分とはいえないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、まず、自閉症スペクトラム症者のライフキャリアの能力・態度指導プログラムに関わる実践成果について、さらに検証を進める。オンラインによる学外の研究者や学校現場の教員等と意見交換する等の方法が安定して運用できるようになってきたため、協議や学会等での発表機会を継続し、より意義のあるものとしていきたい。 次に、自閉症スペクトラム症者のライフキャリアの能力・態度指導プログラムに関わる実践研究についても、さらに進める必要がある。特に高等学校あるいは特別支援学校高等部といった、後期中等教育段階の生徒を対象としたプログラムの検証に注力する。そのためには、大学院生との共同研究の時間として想定しているゼミナールに所属する現職受講者の置籍校種を重点的に取りあげたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、特別活動を要とした児童期から成人期までの自閉症スペクトラム症者のライフキャリアの能力・態度指導プログラムの検証であったが、その準備期間にあたる令和3年1月~5月まで家族の事情により研究を進めることができなかった。それに伴い、実践研究の適切な変更に時間を要し、データ集のためにフィールド開拓、その後の研究実践が遅延したため、旅費、データ解析等予や算専門家からの助言に対する謝金の必要額が減じた。 次年度については、自閉症スペクトラム症者のライフキャリアの能力・態度指導プログラムに関わる実践成果について、さらに検証を進めるために、積極的に学会での発表や専門家との議論の場の設定を行う必要があるため、実践データ分析の費用、学会参加・発表の費用、専門家への謝金等への支出を予定している。また、研究会参加や研究データに関わる協議など、本研究は、これまで、ほぼ全てをオンラインで行ってきたため、機器の消耗が激しく、修理や補填などが必要で、使用するオンラインアプリケーションのライセンス契約の更新も必須であり、それらへの支出も見込む必要がでている。
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