2021年度は,新型コロナウイルスの影響により予定した研究を遂行できなかった。そのため,当初の予定とは異なるが,【実験3】「Snoezelenにおける嗅覚環境と視覚環境の関連性-周波数分析を用いた検討-」を実施した。その結果,α波周波数帯域において視覚刺激と嗅覚刺激が一致する条件が,不一致の条件よりもパワ値の変化率が大きいことが示された。このことから,嗅覚刺激および視覚刺激が一致すると心理的な安定感を感じられ,リラックス効果が増大しα波が増大した可能性が示唆された。 本研究期間全体を通じて,Snoezelenを効果的に利用するための基礎的な理解として,Snoezelenが生体機能にどのような影響を与えるのかについて検討を行った。【実験1】Snoezelen環境が注意の制御(注意を向けさせるなど)に影響を与えるのか,もしくは覚醒水準の変化に影響を与えるのかについて検討し,視覚環境あり条件では,Binaural beatおよびMonaural beatの音がある条件よりも音がない条件でより環境に注意が向き,音がない条件では,視覚環境あり条件よりも視覚環境なし条件でより課題に注意が向くことが示された。【実験2】Snoezelenが生体に影響を及ぼす要因の一つとして視覚(色)環境について検討し,黄色環境により注意が向くことが示された。さらに,赤色環境と青色環境を比較すると,赤色の方がP3bの振幅が小さく,青色環境においては課題遂行に対する意欲を減退させる可能性が示唆された。3つの実験結果から,Snoezelen環境における視覚・聴覚条件の有無がERP成分の増大に影響を与えることが示され,Snoezelen環境が注意の制御に影響を与えること,さらにSnoezelenの環境設定次第では,リラックス効果を促進させられることが明らかとなった。
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