本年度は昨年度までに集めたデータの分析を行った。具体的には、弱視学生が必要とするICT環境に対する大学教員の態度構造を検討した上で、環境整備に協力する際の大学教員の支援自己効力感(顕在態度)に及ぼす個人要因の影響を検討した(研究2)。さらに、大学教員の顕在態度と潜在態度の関連についても検討を行った(研究3)。 研究1では、393名の大学教員にオンライン形式の質問紙調査を実施し、研究1で作成したICT環境整備項目と個人要因への回答を求めた。因子分析の結果、環境整備はインフラ設備と、授業設備に区別できたため、各下位尺度を構成し、個人要因との関連をカテゴリカル重回帰分析により検討した。その結果、いずれの設備内容でも支援体制と関心は共通要因として大学教員の支援自己効力感を高め、インフラ設備でのみ、声掛けとFDは独立要因として大学教員の支援自己効力感を高めることが見出された。 研究3では、まず研究2と同じ協力者にIATを実施し、潜在態度得点(D得点)を算出した。顕在態度に関わる下位尺度得点(インフラ整備尺度・授業設備尺度)と、潜在態度得点をそれぞれ、中央値で区切り、協力者を高群・低群とした上で、個人要因との関連を数量化Ⅲ類により検討した。その結果、1軸(r=0.53)潜在態度が肯定的な者が正、消極的な者が負の方向に、2軸(r=0.45)は顕在態度が肯定的なものが正、消極的な者が負の方向に分布した。各個人要因については、試験・授業・教材の配慮経験者、負担の低い者、FD研修会の参加者、関心の高い者、障害分野の者のカテゴリースコアが、1軸の正の方向、2軸の中央(0)に集まっており、環境整備には、顕在態度が重要であることが示された。 一連の研究により、弱視学生支援に関わるICT環境の整備に協力的な大学教員を増やすためには、支援体制を整え、FD研修会等で理解啓発を行う必要性が示唆された。
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