研究課題/領域番号 |
19K14297
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三盃 亜美 筑波大学, 人間系, 助教 (60730281)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 仮名 / 音読 / 語彙判断 |
研究実績の概要 |
本研究は、世界で初の、日本語の読みに特化した二重経路モデルを用いた、子どもから成人までの「読み障害」に関する「コンピュータモデリング」研究である。コンピュータモデリングから、認知特性に関する見立てと、指導効果に関する仮説の妥当性を検証することで、症例の正確な実態把握と指導効果の予測ができる。それにより効果的な教材や指導の開発・提供へとつながる。日本では発達性ディスレクシア例や失読例の認知特性を把握し読み指導する際に英語の読みに関する二重経路モデルの枠組みが用いられている。しかしその枠組みを日本語の読みに適用することについて妥当性は保証されておらず、日本語の読みに関する枠組みも確立されていない。そこで、本研究では、開発した日本語の二重経路モデルを用いたシミュレーション実験を行い、①二重経路モデルの「仮名の読み処理」に関する枠組みを確立し、②発達性ディスレクシア例と失読例が示す仮名の読み障害のメカニズムを解明し、③試験的に仮名の読み指導の効果を予測することを目的としている。 2019年度から2020年にかけては、主に、健常成人や典型発達児に音読・語彙判断実験を行った先行研究と、本研究で行う音読・語彙判断実験の仮名刺激をコンピュータ上のモデルに呈示し、これらの実験データ全て(読みの諸特徴)を再現するモデルに精緻化する。それにより、仮名の読み処理に関する枠組みを確立する予定である。2019年度は、仮名の読み処理を検討している先行研究を用いて実験内容と結果の整理を行った。先行研究を整理した結果、仮名の読み処理に関して、「きゃ」「きゅ」などの拗音表記が一つの文字表象として認識される段階が、視覚的分析なのか、非語彙処理なのかという問いが未解決であることが分かった。その問いを解決するための実験計画をたてたが、その実験実施には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の異動および海外の大学に勤めている研究協力者の仕事内容の変化に伴い、日本語の二重経路モデルの構築に必要なプログラミングの進捗が遅れた。また新規の音読・語彙判断課題の実験計画をたて予備実験を行う準備を整えていたが、新型コロナウイルスの影響により、成人及び子どもを対象に対面での音読・語彙判断実験を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究の進捗は遅れてはいるが、2019年度~2020年度の2年間で現在計画をたてている音読・語彙実験とシミュレーション実験を行うことが当初の予定であった。2020年度は、研究協力者と密に連絡をとりながら、2019年度の遅れを取り戻すことを目標に、実験を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、2019年度末(2~3月)に予定していた学会発表および海外の研究機関への出張と、実験実施の計画が取り消しになり、前者にかかる旅費と、後者にかかる人件費・謝金の支出がなくなった。これらの取り消しになった、研究協力関係にある海外研究機関への渡航と、予定していた実験を2020年度に実施する予定である。
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