研究課題/領域番号 |
19K14305
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
太田 研 山梨県立大学, 人間福祉学部, 准教授 (10709405)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 重度知的発達症 / 行動的セルフ・モニタリング / セルフデターミネーション / アシスティブテクノロジー |
研究実績の概要 |
第2年次(令和2年度)の研究では、(1)前年度に試作済みのタブレット端末で自身の行動を観察し評価・記録するアプリケーションソフトを改良し、(2)アプリケーションソフトを基に参加生徒が自身の行動を振り返るための映像刺激を検討し、(3)知的障害教育を主とする特別支援学校高等部の作業学習において適応行動増進への効果を検証した。 (1)アプリケーションソフトの改良については、前年度の試作において、動画クリップの転換を判断しにくいこと、評価ボタンの表示を変更できないことが課題となっていた。そこで、動画クリップの転換時に、評価対象となる残りの動画数を視覚的に表示し、評価ボタンも任意の画像を選択できるように改良した。 (2)映像刺激の検討については、行為者のみが描かれた静止画と行為者の他に文脈刺激(例えば、状況や他者の表情など)が描かれた静止画を用いて、参加生徒の弁別特性を把握した。その結果、参加生徒は、文脈刺激のある静止画よりも、行為者のみの静止画によって表された適応行動を正確に弁別する傾向が見られた。そのため、特別支援学校における作業学習において、参加生徒が自身の行動を振り返る行動を動画クリップに残す際には、適応行動の生起・非生起を行為のみから弁別できる行動を標的とする必要性が明らかになった。 (3)適応行動増進への効果については、4名の生徒のうち、3名については作業学習の合間に自身の行動を振り返ることで、後の作業学習へ従事する行動が増加した。しかしながら、3名全員の効果は限定的であり、ピア仲介法や作業課題の構造化などの付加的な介入との組み合わせにより作業学習への従事が一層向上した。4名のうち1名は、ビデオカメラでの撮影に明確な拒否を示した。この1名は、写真撮影で視線回避が強いことから、アシスティブ・モニタリングが適さない特性を事例的に検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第2年次(令和2年度)は、新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言が発令され、年度当初に研究フィールドの特別支援学校が休校措置となった。特別支援学校が再開された後に、訪問日程を再度調整し、9月以降に本格的にデータ収集のための訪問が可能になった。そのため、作業学習場面における効果検証のためのデータ収集を十分に実施できていない。しかしながら、特別支援学校や参加生徒、保護者のご理解ご協力のもと、研究活動の再開を果たせ、効果検証を実施できたため「(3)やや遅れている」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
第3年次(令和3年度)は、アシスティブ・モニタリングの実証研究を追試する。第2年次(令和3年度)は、研究者の異動により、研究協力校との移動時間の関係から、十分な訪問候補日をあげることができなかった。そのため、第3年次(令和3年度)の追試研究では、移動可能な研究協力校に新たに研究依頼をする。また、第3年次(令和3年度)は、有識者や実践家に対して、第2年次(令和2年度)の実践研究の様子を映像にて視聴していただき、アシスティブ・モニタリングの妥当性についてヒアリング調査を実施する。新型コロナウィルス感染症の感染状況を考慮し、可能な場合は遠隔での面接調査を行うなど、当初の研究計画を変更する。
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次年度使用額が生じた理由 |
行動観察に必要な消耗品を購入する。
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