研究課題/領域番号 |
19K14307
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
田島 貴裕 小樽商科大学, グローカル戦略推進センター, 准教授 (80596205)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アクティブラーニング / 学修成果 / 教育便益 |
研究実績の概要 |
アクティブラーニングの教育効果として教育の期待便益を用いて指標化し,その教育効果に影響する要因について定量分析モデルにより検証を行った。本来,アクティブラーニングにより期待される成果としては,単なる知識の修得ではなく,大学卒業後にも生涯にわたり主体的に考える力や学び続けることが出来る汎用的能力の育成である。しかし,このような教育成果指標は短期的に測定することは難しい。 そこで,本研究では短期的な視点で教育成果の検証を行うため,アクティブラーニング型授業を通して,今後も大学で学ぶことが自分の能力向上や,生涯にわたって学び続ける力,主体的に考える力に寄与すると気づかせることを教育効果指標とした。大学での学びの重要性に気づくことは,中長期的に,汎用的能力の育成が期待できると考えられるためである。アクティブラーニングによって,大学での学びから得られる成果を教育便益とし,指標化を試みた。 初年次向けのキャリア教育科目で実践しているアクティブラーニング型授業の履修者(約380名)に対して,授業により得た成果および教育便益に対する意識の変容を調査した。また,汎用的能力(ジェネリックスキル)に対する商用アセスメントテストを実施した。毎回のグループワークへの取り組み姿勢や授業内容の理解,授業に対する関心などの学習状況データ,LMSやクリッカーの学習履歴データ,学外学習時間などの生活状況データを収集し,汎用的能力との相互関係と教育成果指標への影響について定量分析を行った。その結果,授業により得るものがあったと感じた学生ほど,将来,自分自身に教育便益があると期待する可能性が示された。また,グループワークの実践は,教育便益へ大きく影響していることが示唆された。ただし,もともと汎用的能力が高い学生ほど,教育の期待便益が高い可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学で行われるアクティブラーニングの教育効果を可視化するため,教育便益に対する意識の変容を調査し,指標化の検証を行った。そして,汎用的能力(ジェネリックスキル)に関するアセスメントテストを履修者に対して実施し,基礎データを得た。LMSやクリッカーなどの学習履歴データ,一部の学修状況および生活状況データの収集も行い,それらを用いて定量分析モデルを構築し,教育便益に及ぼす影響要因の分析を行った。教育効果指標として教育便益を中心に検討し,教育効果指標に対する影響要因の分析や汎用的能力との関係を検証し,一定の結果を得ることが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
アクティブラーニングの教育成果指標として,教育便益を中心に分析を行った結果,潜在的な汎用的能力(ジェネリックスキル)の差が教育便益へ影響を及ぼすことが示唆された。今後は汎用的能力を中心に,他の要因との相互関係の分析を実施する。ただし,新型コロナウイルスの影響により,当初予定していた大人数向けアクティブラーニング科目の提供が中止となり,この授業の中で汎用的能力のアセスメントテストが実施できなくなった。そこで,当初の予定から変更し,大人数アクティブラーニング科目に対する汎用的能力の調査ではなく,少人数向けのアクティブラーニング科目を調査対象にする。 今後の研究の進め方としては,汎用的能力の短期間の変動に焦点を当てて分析し,教育便益指標との相互関係や,学習履歴データ,生活状況データなど外的要因との関連性について分析を行う。汎用的能力のアセスメントテストは,少人数向けのアクティブラーニング科目の履修者に対して,短期間で複数回実施する。比較のため当該科目以外の学生も調査対象として抽出する。 また,これまでに収集した学習履歴データ,生活状況データのうち,教育成果指標へ及ぼす影響が検証できていないデータの分析を行い,さらに,成績などの教務情報データとの関連性の分析を行う。その後,教育成果指標として汎用的能力の変化と,教育便益に対する意識の変容の統合について検証を行い,新たな教育成果指標としての利用可能性について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2月から3月に予定していた学会発表が新型コロナの影響により中止となったため,その分の旅費の支出がなくなっている。また,約400名に対して,商用アセスメントテストを2回受検させるため,その他の費用を計上していたが,2回目の受験希望者が大幅に減少したことと,大学からの特別補助が出たため,当初の予定より支出が少なくなっている。 次年度以降に商用アセスメントテストを複数回実施する計画のため,それに充当する予定である。
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