最終年度は,新型コロナによって対面によるアクティブラーニング型授業の実施が困難になったことから,当初の研究計画を発展的に変更し,対面履修者とオンライン履修者の混在したハイブリッド授業,全員オンライン授業の2通りでアクティブラーニングを実施した。オンライン授業は,リアルタイムコミュニケーションツールが実装されているビデオ会議システムを用いた。前年度までと同様に,汎用的能力の測定,グループワークへの取り組み姿勢,授業内容の理解及び授業に対する関心,学習履歴データの分析を行い,主に対面授業とオンライン授業の教育効果の差異について検証した。その結果,授業の理解度,満足度は,ハイブリッド授業における対面とオンラインではほとんど差が見られなかった。取り組み姿勢ではやや対面クラスの方が評価は高くなっていた。全員がオンライン授業のときには,理解度,満足度,取り組み姿勢は概ね高く,ハイブリッド授業との差もほぼ見られなかった。 研究期間全体を通じて,本研究ではアクティブラーニングの教育効果の可視化と,その影響要因について定量分析モデルを構築して検証し,次のような点を明らかにした。まず,アクティラーニングの教育効果として,汎用的能力の変化と教育便益に対する意識の変容を考慮し,大学での学びの有効性や重要性に対する認識を指標化した。分析の結果,アクティブラーニングの実践は教育の期待便益への影響が大きい,授業から得るものがあると感じた学生は期待便益が大きい,汎用的能力の高い学生ほど期待便益が高いことなどが明らかとなった。また,アクティブラーニングへの取り組み姿勢は,授業内容の修得と知識の理解へプラスに作用していた。そして授業内容の習得と知識の理解が高まるほど,今後の大学での学びに対する認識が高くなることが明らかとなった。一方で,学修状況や生活状況などは,教育効果との明確な関連は見られなかった。
|