本プロジェクトは、長期的に学習成果を評価することの有用性を検証し、授業評価の方法を改善することが目的であった。特に能動的な学習活動を行う教育実習、看護学実習を受講した学生を対象に調査を行い、過去に受講した科目に関する評価の変化に影響を与える要因を明らかにした。 2023年度の研究計画では、収集した定量・定性データから学習経験とベネフィット遅延の関係性を明らかにし、研究成果を外部で発表することが目標であった。まず、教育実習を受講した学生約18名から収集した学習経験獲得に関する意見でテキスト分析を行い、遅延ベネフィットの享受に関係する要因について分析した。この成果については、2024年1月に The IAFOR International Conference on Education in Hawaii (IICE2024)にて口頭発表を行った。また、看護学実習を受講した学生から収集した定量データから、学習経験と遅延ベネフィットを定量的に測定するための尺度の作成を試みた。この研究成果は日本教育工学会の2024年春季国内大会において発表された。 研究期間全体を通して、目的であった学生が遅延して獲得するベネフィットが授業評価に与える影響を明らかにすることができた。これより、即時的な授業評価だけではなく、ベネフィットの遅延を考慮した長期的な授業評価を行うことで、授業評価をより正確に測定できる可能性が示唆された。また、コロナ禍の代替研究として、オンライン講義における学習経験レベルと学習成績の関係性について調査をおこなった。 本研究成果は、国内外の学会で複数回発表され、また国内外の論文誌に掲載されている。今後の研究として、学習経験と遅延ベネフィットを測定する定量尺度に関する研究を継続して行う予定である。
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