学習中のつまずきと整理指標計測に関連して、オンデマンド授業中の視線計測および学生の学習指向や成績プロファイルの計測を試みた。オンデマンド授業を受講する大学生34名を対象として実験を行った。 実験では、学習者のモチベーションや事前知識のレベルに加え、授業使用言語(日本語)の語彙力テストも実施した。なお、参加者全員が母語を日本語とする者であった。 視線計測は高サンプリングレート(1200Hz)での計測可能なTobii Pro Spectrum(Tobii社)を使用し、高精度での授業動画視聴中・および授業前後テスト・語彙テスト中の注視位置計測を行った。 本研究結果から、授業動画受講後の事後テスト成績低群は、成績高・中群と比較して、授業動画中の図の注視時間が有意に低いことが示された。語彙成績の高・低群でも授業動画視聴中の図注視時間を比較したところ、語彙成績の低い群のほうが有意に注視時間が低いことを示した。これらの結果は、動画授業での図の使用について、授業理解度が低い層には図の効果が限定的である可能性を示唆するものとなった。一般的には図を提示することで「難解な思考プロセスの可視化ができ、情報を簡潔に伝えられる」と考えられている。しかし、本研究の結果からは、成績低層では図をあまり注視しておらず、期待されるような図の使用効果が低い可能性も考えられる。本研究は、動画を用いた授業コースデザイン等改善に貢献するものと考えられる。なお、本研究の結果については、情報処理学会第85回全国大会にて発表を行った。現在、さらなる解析を加え、国際学会誌への投稿を準備中である。 本研究取り組み期間中に他研究者とのネットワークを広げ、VR空間内での遠隔授業受講中における精神活動評価に関する研究を立案中である。この計画には、本科研費研究取り組み中に行なった生理指標計測の試行錯誤が活かされている。
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