研究課題/領域番号 |
19K14321
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
本吉 大介 熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (30712335)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 重度・重複障害児者 / ウェアラブルデバイス / 心理過程測定評価 / 生体反応 / 特別支援教育 / セルフモニタリング |
研究実績の概要 |
2019年度は、研究の初年度として①ウェアラブルデバイスを活用した研究環境の構築、②ウェアラブルデバイスを活用することでの生活上の変化、③ウェアラブルデバイス活用による障害児・者の心理過程の推定、④ウェアラブルデバイス活用におけるインシデント(危険や異変)の収集を、少数の事例から行いました。以下が詳細です。 ①研究環境の構築については、デバイスと情報通信環境を活用した心拍反応データの測定・収集方法、心理過程の評価に用いる映像資料の編集、統計解析を行うためのデータの整理を効率的かつ安定的に行う方法を整えました。 ②生活上の変化について、事例研究を行いました。肥満状態にある研究協力者がデバイスを常時身に付け、生体情報(心拍、消費カロリー、活動量)を「見える化」することでセルフモニタリングが行える環境を整えました。また、各種健康管理に関する情報を取得することで生活習慣が変化し、肥満状態を改善することができました。 ③障害児・者の心理過程の推定について、6名の障害がある人を対象に試験的に実施しました。少数事例ではあるものの、障害がある人は高いストレス状態にあることがうかがわれます。また、療育キャンプを通して生活環境の変化と生活環境への慣れによるストレス状態の変化を確認することができました。重度の肢体不自由者においては、リラクセイションによって身体の緊張が弛緩していくと心拍反応が低減し落ち着いていくことがうかがわれました。 ④インシデント(危険や異変)について、行動上の障害がある重度の知的障害の人にとっては慣れない腕時計型のデバイスを身に着けることへの強い不安があり、別の方法を考える必要があります。肌が弱い人は皮膚の状態への配慮が必要です。併せて、機器の操作についてのサポート体制が必要であることがわかりました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の通り、教育現場での応用を到達地点としながら、各種機器とアプリケーションを効率的・安定的に活用できる研究環境の構築は進めることができています。また、生体反応を活用した重度障害児・者の心理過程測定評価の妥当性を検証するためのデータの蓄積も進められています。 重度・重複障害がある人におけるウェアラブルデバイスの試用については、計画当初の目標人数に満たない状況があります。その理由としては、感染症の蔓延とその対策によって研究フィールドとなっている療育活動が延期になっていることがあり、新規の募集が難しくなっています。試用の期間については当初の計画通り進んでいます。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、教育実践を通したデータ収集と分析が主な研究内容です。計画当初の研究フィールドは、感染症対策のため自粛の状況があります。研究協力者の募集方法について、安全にかかわる配慮を十分に検討しながら、対象機関と対象者を広げることによって研究を進めていく予定です。 また、重度・重複障害(行動上の障害)がある人の中で、腕時計型のウェアラブルデバイスを身に着けることに慣れていないため、強い不安を覚える人がいます。保護者など生活を支えている人は、気持ちを理解して対応していきたいという願いを語られているため、本研究に期待しています。腕時計型のデバイス以外の方法も視野に入れ、ニーズに応えられる研究となるように進めていきたいと考えています。 2019年度内の研究成果については学会発表、雑誌論文への掲載を進めていきます。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画当初、データ収集を行う予定にしていた研究フィールド(療育キャンプ)が感染症対策によって中止となったため次年度使用額が生じています。 感染症の状況が改善した場合には2019年度の予定を延期し、2020年度にデータ収集を実施するための旅費として使用します。他の通信機能を活用して研究協力者の募集や対応を行う場合には、物品費と通信に関わる費用として使用する予定です。
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