医療系大学生の動機づけ調整方略尺度を開発し、初年次教育における学習支援の示唆を得た。対象は2021年度、X大学医学部、保健医療学部において初年次教育科目を受講した第一学年である。調査項目には、梅本・田中(2012)動機づけ方略、伊藤・神藤(2004)の学習の持続性を用い、全35項目について5件法で回答を求めた。回答者は206名、うち不良回答2名分を削除し、204名を対象とした。G-P分析およびIT相関の結果、3項目を削除し、因子分析(主因子法、プロマックス回転)を行った。スクリープロットの急落から因子数を5に指定し、多重負荷の項目を除外しながら分析を繰り返した結果、1:興味喚起方略、2:情意調整方略、3:達成志向方略、4:リハーサル方略、5:体制化方略の5因子15項目が抽出された。信頼性分析を行った結果、α=.868(全項目)、累積説明率は76.7%であった。これらを本研究では、医療系大学生における動機づけ調整方略尺度とした。医療系大の第一学年は、学習場面で5つの動機づけ調整方略を使用していることが明らかになった。あらゆる分野の科目を受講する学生の動機づけを高めるためには、多様な調整方略を使用できるよう支援する必要がある。情意といった学習阻害要因の側面も示唆されたことから、調整方略をスキルとして習得させることが初年次教育において重要であることが示された。2022年度の初年次教育科目では、これまでの研究で得られた知見を踏襲し、学生自身が自己調整の意味を理解して、そのスキルを発達させるためのワークを取り入れた。さらには、ラーニング・ブリッジングとリフレクションの深さに関連がある(杉浦ほか 2021)という結果を踏まえ、授業間の架橋、他の授業における経験との架橋、授業と医療職との架橋について、講義やワークを取り入れた。
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