本研究においては,映像教材の視聴時におけるマインドワンダリングを,認知負荷の操作,及び,バイオフィードバックによって抑制し,学習の効率化を目指した.具体的には,現在取り組んでいる課題とは無関係な思考をしてしまう現象かつ無自覚のまま発生し進行するとされるマインドワンダリングについて,1)映像教材の視聴速度を適度に速めること,また,2)脳波と機械学習を用いてマインドワンダリングを検出し,バイオフィードバックを行うことによって,抑制を図った.
前者について,本研究環境下においては,映像教材の視聴速度を速めることで主観的に認知されるマインドワンダリングの程度を軽減する可能性が示唆された.また,視聴速度を速めるアプローチに加え,映像教材をセグメント化した上で視聴するアプローチはマインドワンダリングを抑制する上で効果的である可能性が示唆された.これらのことから,映像教材視聴時におけるマインドワンダリングへの対処として,映像教材の視聴速度を適度に高速化すること,及び,映像教材を学習内容のまとまりごとにセグメント化し視聴することが挙げられる.
後者について,一部の実験協力者においては,脳波と機械学習を用いてマインドワンダリングを検出し,バイオフィードバックを行うことによってマインドワンダリングに関するメタ的気づきを促す事例が得られた.しかしながら,マインドワンダリングの検出精度には個人差があり,結果的に本研究下で実装したシステムによってマインドワンダリングに関するメタ的気付きが促されたかどうかについては,マインドワンダリングの検出精度によって大きく異なるという結果が得られた.こうした個人差を前提に,映像視聴時における学習者自身に特徴的な脳波パターンをいかに正確に検出するかが今後の課題といえる.
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