本研究は、ICT(情報通信技術)の活用により、個人や集団の健康・身体情報を取得・モニタリングしながら、学習活動へ応用し、ヘルスリテラシー教育システムを構築するために必要となる基礎的な知見の蓄積を目指した。 最終年度である2022度の研究成果について、本研究課題の遂行に際し、沖電気工業株式会社(以下、OKI)イノベーション推進センターとの産学連携が実現した。このことにより、OKIの無線通信技術とIoT技術を活用し、当初課題となっていた通信範囲の拡張に成功し、屋外での児童生徒の運動中の身体情報の取得・リアルタイムモニタリングが可能になった。それらのシステムの運用について、大阪市内の小中学校3校、14学級にて合計64時間の実証実験を実施した。実証実験対象の体育授業を受講した児童・生徒のうち、224名分、授業担当教員は7名分を有効データとして収集した。本システムを活用した体育授業の楽しさ・体育授業への参加意欲の向上・ICTの活用が体力や運動能力の獲得及び運動習慣の獲得(健康志向)に及ぼす効果についての実感など、肯定的回答がいずれも約90%と、学習者らは今回のICTを導入した授業に概ね満足し、取り組みへの参加によって運動や健康への関心を高めたことが確認できるが、学校間での相違については対象学年、介入単元、また授業での活用方法(期間や頻度を含む)の違いによって影響を受けることも示唆された。 研究期間全体を通じては、幼児~中学生を対象とした調査研究により、ICTを活用した身体情報の取得は健康意識の変容に有効であり、ヘルスリテラシー教育システムの構築に寄与することを明らかにした。 尚、昨年度実施した研究の成果について、2022年6月の日本体育科教育学会大会にて報告した(ICT活用による身体情報の可視化が学習者の運動意欲や健康への関心に及ぼす影響:中学校体育科の持久走の授業実践に着目して)。
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