研究課題/領域番号 |
19K14334
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
古田 紫帆 (望月紫帆) 大手前大学, 国際日本学部, 准教授 (60469088)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 授業研究 / 教員養成 / 授業分析 / 授業観察 / 協働学習 |
研究実績の概要 |
2021年度は主につぎの3つのことを行った。 1つ目は、2019年度に実施した試行(教育実習経験者と未経験者で構成された複数チームで中学校の授業を観察し、記録共有システムで授業研究を行う)から得ることができたことを改めて整理して、学会において専門家と意見交換を行うことである。 2つ目は、2019年度に引き続き、代表者が担当する教育実習関係科目における事前指導の限られた時間の中において、模擬授業の実施と並行しながら授業観察の訓練を試行することである。このときも2019年度と同様に、複数の観察者が模擬授業を観察しながら授業の記録をとり、授業記録共有システムを用いて記録を共有し、協議した。ただし、2021年度は新型コロナウィルス感染対策のため、zoomを用いて模擬授業を行った。3つ目は、上記の実践における課題点を踏まえて、オンライン模擬授業におけるチーム型授業研究を企画し、有志の学生の協力を得て試行した。今後は非対面型の学習を設計・運用する経験や、それを前提としたチーム型授業研究を行う必要性を感じて行った。 これらの取り組みを通して明らかになったことは、つぎの2点である。 まず、学習経験や属性が多様な組み合わせであったとしても、授業記録の共有や授業の解釈を妨げることはない、ということである.むしろ,学習経験や技能や専門性の違いをうまく活かすことができるような学習環境を設定することによって、授業の解釈の視点の持ち方や記録のとり方などに関する学習が促される可能性が示唆される。2つ目は、観察対象となる授業もしくは模擬授業を設計する際に、学習者一人ひとりの思考を可視化するしくみ(例えばICTを用いて一人ひとりが考えを表現するなど)を採用することによって、その授業もしくは模擬授業がオンラインで実施されたとしても授業を観察しながらチームで協議を行うことが可能であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表者がこれまでに実施してきた教育実習を経験した学生同士によるチーム型授業研究や、経験者と未経験の学生との混合の学習集団におけるチーム型授業研究で得られた知見は、本科研で主題とする「教育実習生(教育実習未経験者)を対象とした授業観察力養成プログラムの開発」に一部活かすことができるものの、大半は適用が難しいものであり、かなり異なる枠組みを前提として捉え直す必要性を感じるようになってきた。また、近年、学校での「授業」そのものが変容してきており、授業研究で必要な視点も捉え直しが必要になってきている。以上のことから、プログラムを大幅に改良する必要があるため、当初の計画と比較すると、やや遅れている状態であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画変更の必要性が生じた背景として、「授業研究」でも多様な目的・方法があるにも関わらず、これらが十分整理されないまま同じ土俵の上で比較検討し、安易に成果を援用していたことが一因となっていることが考えられる。対象等が変化したことによって、開発の方向性としてどのようにしていくべきかについて改めて考えるために、「授業研究」を必要とする対象者の特性やニーズ、「授業研究」の目的や方法の視点から、過去の理論も含めてこれまでの試行を整理する。そして、それを踏まえて、改めて「教育実習生(教育実習未経験者)」を対象とした授業研究のプロトタイプとなるプログラムを開発し、試行に結びつけたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、ほとんどの学会がオンラインで実施され、旅費としての支出がゼロであったことの影響が大きいと考えられる。
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