研究課題/領域番号 |
19K14342
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岩堀 卓弥 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 特別研究員(PD) (50835999)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サイエンスコミュニケーション / 防災教育 / 理科教育 / 地震学 |
研究実績の概要 |
防災教育の成果を、実践の場で問う手段が求められている。このとき、学校という条件を限定し、そこで専門家と共になされる実践参加型防災学習のデザインを課題とすることで、全国一律の学校制度の定着力を生かした効果的な提案をなし得る。特別研究員の岩堀の目的は、地震学に関する実践参加型の防災学習プログラムを小学校・中学校・高等学校・大学の各年代で構築し、従来の知識伝達型の授業との適切な組み合わせでそれらを実施することによって、学校教育各年代の防災教育でつけるべき力と教育方法の関係を整理された形で提示することにある。 本課題で研究を行う観点と、研究実績の概要を次に示す。 ①福井の事例からはこれまでに行った研究(小学・大学年代)で欠けていた中学・高校年代での発達課題の整理、②川越の事例からは実践的防災の知識とサイエンスの知識の関係性の再構築、③メキシコの事例からは日本との比較による両国の社会的な地震常識の明確化、のそれぞれの側面から研究課題を考察することにある。 令和3年度には、実践参加型防災学習をテーマに、②と③の点に関する研究成果として3編の論文を公開した。主に初年度に得たデータの分析を行った中で、本研究課題の中核となる、論理実証主義と社会構成主義(自然科学と人文社会科学)を架橋するサイエンスコミュニケーションの新たな理論的フレームワーク構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の研究活動は以下のように行った。実践面に関しては、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて活動を中断していた各フィールドで、防災学習プログラムの再開を企図し、その一部が実現した。具体的には、埼玉県川越市での防災教育が進展した。また、メキシコ渡航を行い、防災教育教材のインタビュー調査を行った。一方で、福井県での地震防災学習は中断している。 続いて、理論面に関しては、受け入れ研究者の主催する研究会での輪読等や講義を中心とした基礎知識の共有に加え、受け入れ研究機関の慶應義塾大学SFCのラテンアメリカ研究会と防災デザイン研究会でのメキシコ関連のゼミなどを行った。これらを整理し報告する学会活動について、オンライン開催された複数の学会に参加した。 研究成果の公開について、主に計画初年度の実践で得られたデータを基にした研究成果を論文の形で公開した。
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今後の研究の推進方策 |
実践の再開で得られたデータを、初年度の新型コロナウイルスの感染拡大以前の活動により得られたデータと合わせて、研究をまとめる。 これらの活動の意義と重要性は、改めて次の通りである。①福井の事例からはこれまでに行った研究(小学・大学年代)で欠けていた中学・高校年代での発達課題の整理、②川越の事例からは実践的防災の知識とサイエンスの知識の関係性の再構築、③メキシコの事例からは日本との比較による両国の社会的な地震常識の明確化、のそれぞれの側面から研究課題を考察することにある。 これらを論文の形にまとめる作業について述べる。本研究課題の中心的なテーマを扱った①については現在投稿中であり、②の観点を改めて掘り下げた論考を現在執筆中である。これらの作業を通じて、社会構成主義的サイエンスコミュニケーションの理論的フレームワークの大枠の中で完成させる。すなわち、学校教育各年代の防災教育でつけるべき力と教育方法の関係を整理された形で提示するとともに、実践参加型と知識伝達型の教育の関係の背後にある科学の知と防災の知の関係を整理し、残りの期間の計画を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、フィールドワークのための旅費の使用が制限されたため、制限解除に伴い予算執行を進める。主な使途として、令和4年度は1~2度のメキシコ渡航を行いこの旅費に充てる。
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