研究課題/領域番号 |
19K14348
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
川口 莉佳 北里大学, 大学病院, 医療技術員 (70813153)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 遺伝教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、初等・中等教育において全日本国民が遺伝リテラシーを身に付けられるような遺伝教育を提案し、実現させることを目的としている。2019年度は遺伝教育の現状を把握するために、文部科学省が作成した「小学校用・中学校用・高等学校用教科書目録」に記載されている検定済み教科書273冊を対象とした調査を行った。対象教科と教科書数は、小学校では社会・理科・生活・家庭・体育・道徳の145冊、中学校では社会(公民的分野)・理科・保健体育・技術家庭(家庭分野)・道徳の62冊、高等学校では公民(現代社会・倫理)・理科(科学と人間生活・生物基礎・生物)・保健体育・家庭(家庭基礎・家庭総合)の66冊である。これらの教科書に指標として用いる「21世紀を生きる一般市民に必要とされる遺伝リテラシーの詳細に関するコンセンサス」(2015年)の89項目の遺伝学の知識に関する記載があるかを調査した。現時点で87冊(31.9%)の調査が完了している。調査が完了した社会・生活・体育について報告する。高等学校・公民の教科書1冊のみでコンセンサスと完全一致する記載が1項目確認されたが、その他の教科書では確認されなかった。さらに、コンセンサスに記載のある遺伝性疾患「鎌状赤血球貧血・遺伝性乳癌卵巣癌・脊髄性筋委縮症」については全ての教科書で記載が確認されなかった。コンセンサスの項目に関連する記載は中学校・高等学校の各教科で確認され、その傾向が明らかとなった。社会では、DNA鑑定の不確実性、遺伝子組換え食品の安全性や環境への影響、遺伝性疾患と診断されることで就職や保険加入に不利益が生じる遺伝差別、受精卵や胎児の段階で遺伝学的検査を行う着床前診断や出生前診断に伴う倫理的問題に関する記載が多い傾向であった。保健体育では、がんなどの疾患の一部には遺伝が関与していること、遺伝子組換え食品の安全性に関する記載が多い傾向であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画より、2019年度・2020年度の2年間で教科書を用いた調査を進める予定であるため、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度より進行中の教科書を用いた調査を完了し、日本の初等・中等教育で用いられる教科書がコンセンサスの89項目の遺伝学の知識をどの程度カバーしているか、得られた成果を学会等で発表することを目標としている。さらに、2021年度・2022年度に予定している全国の小学校・中学校・高等学校の教員や生命科学系の大学教員と遺伝医療従事者を対象とした無記名式アンケート調査・解析に向け、アンケート内容の検討、対象者の選定、解析方法の具体的な検討等の準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に調査対象とする教科書や調査時に使用した書類やファイル等を収納するキャビネットを購入予定であったが、2020年度に所属する研究室の引っ越しが行われることが決まったため、物品費が次年度使用予定となった。2020年度に新しい研究室の間取りに合わせたキャビネットを購入する予定である。
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