研究課題/領域番号 |
19K14350
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研究機関 | 帝京科学大学 |
研究代表者 |
江田 慧子 帝京科学大学, 教育人間科学部, 講師 (90648461)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オオルリシジミ / 絶滅危惧種 / 環境リテラシー / 環境教育教材 / マーキング調査 / 卵寄生蜂 |
研究実績の概要 |
2019年度は本研究のために3つの研究を行った。 1)オオルリシジミ成虫の生態的知見の構築 成虫の移動・分散範囲を調査するために、成虫の翅にマークをするマーキング調査方法を行った。調査地は長野県の国営アルプスあづみの公園の里山文化ゾーンで調査をした。その結果、5月22日から6月6日までで未マークが147個体、マークが56個体、全個体が203個体であった。2019年にサンクチュアリでマークされた120個体の移動経路は、マークされた保護区から89~116m離れたクララ群落と523~685m離れたクララ群落であった。また2019年には公園外の農道の道端に植栽されたクララ群落でも保護区内でマークされた個体が再捕獲された。保護区で再捕獲された個体の割合は25.8%であり、前年と比較して低いことから移動、分散が活発に行われていることが明らかとなった。 2)オオルリシジミの卵寄生蜂の調査 オオルリシジミ卵に対する寄生蜂による寄生の実態を定量的に把握するために卵のサンプリングを行った。その結果、保護区の寄生率は65.3%であり、田園区では68.3%であった。孵化率は保護区では49卵中3卵(6.1%)、田園区では41卵中わずか1卵(2.4%)であった。1卵あたりの寄生数の範囲は1~4個体で、調査した107卵のうち寄生数が1個体は45卵(42.1%)、2個体が56卵(52.3%)であった。 3)環境教育教材の実施 安曇野市立穂高認定こども園と熊本県高森保育園にてオオルリシジミ幼児向けの教材プログラムの実験的施行を行った。プログラム実施前はオオルリシジミに関する質問に正しく答えられなかったが、プログラム実施後は正しく答えることができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はオオルリシジミの発生状況が分かった。またマーキング個体の推移を見てみると2017年は23個体、2018年は32個体であったのに対して2019年は203個体となってことで個体数が増加・安定していくことが分かった。よって、2020年度からは実際に児童と調査を行うことが可能になると考えられる。また移動についても前年よりも移動個体が多くなり、食草を植えることでより移動・分散できることが個体群として可能であると判断することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は新型コロナウイルスの関係で5-6月のオオルリシジミの発生時期に東京から長野県へ移動することができず調査が不可能である。また子どもを集客しての学習会や観察イベントをすることができない。そこでオオルリシジミへの野外の調査や子どもと対面しない環境教育教材の開発を行っていく計画である。 1)パネルシアター(幼児対象) パネル布を貼った舞台に絵や文字を貼ったり外したりして展開する、おはなし、歌あそび、ゲームをはじめとする教育法である。オオルリシジミの生態について物語形式で説明できるオリジナルシアターを作成する。 2)擬似標本キット(児童対象) オオルリシジミの生物体の代わりにプラ板を使って標本を作成する。オオルリシジミは指定希少野生動植物のため、無断で捕獲、採集することができない。プラ板で作成することで、子どもたちが持ち帰ることが可能となり、自宅での反復学習にもつながる。 3)子ども図鑑(幼児・児童対象) オオルリシジミの観察場面で活用できる手持ちサイズの小さな図鑑を作成する。図鑑には首からぶら下げられるように紐をつけ、手元で生態について確認しながら観察が出来るようにする教材を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
<次年度使用額が生じた理由> 予定よりも出張費がかからなかったことと、調査には既存の物品を使用したために物品費の捻出が必要なかった。 <使用計画> 2020年度は多くの教材を作成することで物品費を使用することを計画している。また論文を作成、投稿するために費用を使用していくことを考えている。
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