研究課題/領域番号 |
19K14353
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
山田 順子 玉川大学, 脳科学研究所, 研究員 (20837124)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 向社会的意思決定 / Social Mindfulness / 共感 / 社会生態学的アプローチ |
研究実績の概要 |
令和3年度は,日本および米国における向社会的意思決定の心理基盤の検討と,日本国内における向社会的意思決定の神経基盤の解明を目的としたfMRI研究の実施を予定していた。課題遂行にあたり,オンライン調査プラットフォームQualtricsを用いてSocial Mindfulness課題ならびに関連変数(共感性; Davis, 1983, 文化的自己; Hashimoto & Yamagishi, 2016, 関係流動性; Yuki et al., 2007)などからなる調査票を再編し,またfMRI撮像に向けたSocial Mindfulness実験プログラムの調整を行った。 COVID-19の感染リスクが依然として高いことからfMRI研究の実施が困難となったため,令和3年度はSocial Mindfulnessの既存データの再分析を行った。未就学児から成人までのSocial Mindfulness実験のデータを分析し,Social Mindfulnessが発達とともにどのような変化機序ならびに関連する心理変数を検討したところ,Social Mindfulnessにおける多数派選択,すなわち向社会的意思決定は年齢とともに非線形の変化を示した。とくに向社会的意思決定は,未就学児から成人期前期にかけ上昇するものの,成人期後期にかけてその後減少するというパターンが得られた。脳領域,特に前頭前皮質などの機能は,思春期にかけ上昇し,その後加齢とともに減衰することも指摘されていることから,日本人における向社会的意思決定の神経基盤として前頭前皮質が関連している可能性が示唆された。また向社会的意思決定の年齢による変化パターンは共感性や個人主義―集団主義や文化的自己観と関連することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年度は,日本国内において日本人を対象にfMRI研究を実施することで,日本人におけるSocial Mindfulnessの神経基盤を検討し,欧米人を対象に行われた先行研究の結果と比較する予定であった。共同研究者の協力のもと,研究対象者の募集準備および実験プログラムの作成は順調であったが,都内におけるCOVID-19の感染状況が依然として高いこと,また研究実施機関の建て替えに伴うfMRI機材の交換により,fMRI研究の実施が困難となった。このため,令和4年度にfMRI研究を延期することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,日本人学生を対象にfMRI研究を実施し,日本人におけるSocial Mindfulnessの神経基盤を明らかにする。具体的には,日本人においてSocial Mindfulnessと関連する脳領域を明らかにした上で,欧米人を対象に行われた先行研究の脳領域で報告されている脳領域と比較することで,日本人と欧米人においてSocial Mindfulnessの神経基盤が類似しているかを検討する。またfMRI研究の実施に先立ち,日本および米国で同時期に質問紙研究を実施し,Social Mindfulnessと関連する心理変数を再度精査し,fMRI研究で見いだされた関連脳領域と心理変数,Social Mindfulnessそれぞれの関連を包括的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度の計画では,日米における向社会的意思決定の再調査(約150,000円),日本人を対象としたfMRIによる脳画像・脳機能計測(約300,000万円)の実施を予定していた。また,調査および計測で得られたデータに基づく国際誌への論文投稿(約200,000円)を計画していた。しかし,日本におけるCOVID-19の感染状況ならびに研究所属機関の建て替えに伴うfMRI機器の交換によってfMRI研究の実施が困難となった。このため共同研究者と相談の上,研究計画全体を令和4年度に繰り下げることとした。
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