研究課題/領域番号 |
19K14356
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
竹部 成崇 大妻女子大学, 文学部, 講師 (10822314)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 資源不足 / 不況 / 欠乏 / ゼロサム信念 / 内集団の範囲 / 移民 / 外国人労働者 / プライミング |
研究実績の概要 |
2022年度は前年度までに続き、資源不足が内集団の狭隘化を導くプロセスを検討した。具体的には「資源不足はゼロサム信念の高まりを介して内集団の範囲を狭める」という仮説をシナリオ実験で検証した。まず、前年度末に行った「外国人労働者帰国推進方針に対する賛否」を従属変数として上記仮説を検証する予備実験のデータを基に例数設計を行い、OSFにプレレジをした上で本実験を行った。その結果、予測通り、資源不足はゼロサム信念の高まりを介して外国人労働者帰国推進方針への賛成度を強めていた。続いて、ゼロサム信念を操作する実験を行った。予備実験を行い、それを基に例数設計をし、OSFにプレレジした上で本実験を行ったところ、仮説が支持された。すなわち、資源不足時でもゼロサムでないことを示唆すれば外国人労働者受入拡大方針への反対が弱まっていた。これらの結果は、資源不足がゼロサム信念の高まりを介して内集団の狭隘化を導くことを示すとともに、どうすれば資源不足時の排他的傾向を抑制できるかを示唆するものであった。 これに加え、前年度に続き、世界価値観調査データを用いて上記仮説を検証する準備も進めた。 上記以外に、「資源不足をプライミングされると、内集団成員か外集団成員か曖昧な顔を外集団成員と判断しやすくなる」という知見を追試する研究も実施した。プライミングの有効性に関する予備調査を実施した上で、元研究の約10倍のサンプルサイズで、OSFにプレレジをした上で実験を行った。その結果、資源不足プライミングの効果は見られなかった。この結果は、「資源不足による内集団の狭隘化が態度や行動より前の“知覚”という段階で“非意識的に”生じうる」という理論的・社会的インパクトのあることを示唆する元研究の知見は再現性が低い、あるいは一般化可能ではないことを示すものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①1年目は所属先が変わり、当初想定していたほど研究に専念できなかったため。 ②2年目は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で授業方法の変更を余儀なくされ、当初想定していたほど研究に専念できなかったため。 ③先行研究で示されていた「資源不足が内集団の範囲を狭める」という知見が、当初予定していた方法では安定して再現されず、新しい方法を模索する必要があったため。 ④近年求められている例数設計やプレレジといった新しい研究習慣を積極的に取り入れることとしたが、当初はそれらに慣れるのに時間を要したため。 ⑤出産・育児というライフイベントが発生し、当初想定していたほど研究に専念できなくなったため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行った研究の成果を論文という形で発表する。また、世界価値観調査データを用いて、「資源不足がゼロサム信念を介して外国人労働者の受け入れに対する態度をネガティブにする」という仮説を、これまでに行ったシナリオ実験より生態学的妥当性が高い方法で検証する。さらに、もし可能であれば、資源不足プライミングの有効な方法を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗が遅れているため。また、研究成果について国際学会での発表を予定していたが、学務や新型コロナウイルス感染症拡大の影響や出産・育児といったライフイベントで発表できなかったため。次年度は着実に研究を進め、さらに成果を英語論文という形で発表していく予定である。
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