研究実績の概要 |
2023年度は、前年度に実施した「資源不足をプライミングされると、内集団成員か外集団成員か曖昧な顔を外集団成員と判断しやすくなる」という知見を追試する研究の成果を査読付き国際誌に発表した(Takebe et al., 2023)。 また、「資源不足はゼロサム信念の高まりを介して内集団の範囲を狭める」という仮説をシナリオ実験で検証した研究も、査読付き国際誌に投稿した。しかしこちらは、追加でプライミング実験を行うことを要求された。そこで、記事を用いて資源不足感を操作した上で、ゼロサム信念・外国人労働者受入拡大方針に対する賛否を測定する実験を行った。予備実験を行い、それを基に例数設計をし、OSFにプレレジした上で本実験を行ったが、仮説は支持されなかった。予備実験と矛盾する結果であったため、予備実験と本実験の合算データを用いて例数設計をし、再度実験を行ったが、やはり仮説は支持されなかった。仮説不支持であった結果も含め、査読付き国際誌に投稿した(査読中)。 上記に加え、世界価値観調査データを用いて、「資源不足はゼロサム信念の高まりを介して外国人労働者受入に対するネガティブな態度を強める」という仮説を検証した。しかし、資源不足の指標として失業率を用いた分析では仮説は支持されなかった。先行研究で示されていた失業率とゼロサム信念の関連も見られなかった。今後は、探索的分析として失業率以外の指標(e.g., GDP)を用いた分析も行った上で、査読付き国際誌に投稿する予定である。 研究期間全体を通じて、資源不足プライミングを用いた実験の結果は再現性が低いことが明らかとなった。また、大規模データを用いたマルチレベル分析では、データの取り扱い方法や分析方法によって結果が容易に変わりうることが示唆された。今後は、資源不足の効果を検証する適切な方法を確立した上で、その影響を明らかにすることが望まれる。
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