研究実績の概要 |
てんかん患者において,発作が十分に抑制されているにもかかわらず,社会生活が困難な患者が存在する.その原因として,てんかん患者の社会的認知機能の低下が考えられ,内側側頭葉てんかんで社会的認知機能の一つである表情認知機能の低下を明らかにした(Tanaka etal.2013.)が,全般性てんかん(idiopathic generalized epilepsy, IGE)については未だ十分に明らかになっていない.IGEの発症年齢は25歳以下と若く早期に円滑な社会生活を送るためには発作抑制のみならず社会的認知機能を明らかにし取り組む必要がある.本研究の目的は,動画表情認知課題を用いて特発性全般てんかんの表情認知機能の解明を目指すことである.神経システムの解明は,先行研究にて明らかにした焦点性てんかんの表情認知機能の低下と, IGEとの比較,および脳波・MRI検査より得られたてんかん性放電と表情認知機能システムとの関連を検討し明らかにする. 令和元年度については,対象者を設定しIGE29名,MTLE27名,正常コントロール14名に表情認知課題および神経心理学検査を行った.使用した表情認知課題は従来の写真などの静止画とは異なりよりより現実に近い動画であり基本6表情(喜び,怒り,悲しみ,嫌悪,恐怖,驚き)からなる.現時点では,MTLE群においては既存の報告と同様の結果が得られている.本年度は引き続き各郡(IGE群,mMTLE群、正常コントロール群)の表情認知の評価を行うとともに,データをまとめてんかん患者の表情認知機能の解析をする.
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