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2019 年度 実施状況報告書

自閉症スペクトラム障害における社会的動機づけに関与する機能的脳ネットワークの同定

研究課題

研究課題/領域番号 19K14364
研究機関首都大学東京

研究代表者

青木 隆太  首都大学東京, 人文科学研究科, 特任准教授 (50751103)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード社会神経科学
研究実績の概要

自閉症スペクトラム障害(ASD)の中核的症状のひとつである社会的コミュニケーションの不全は、「心の理論(theory of mind, ToM)」と呼ばれる他者の内的な心理状態を推測する能力の低下に起因すると考えられてきた。一方で近年、ASDの特徴は社会的な刺激や情報が報酬として感受されないことにあるとする「社会的動機づけ仮説」が提唱され、脳内の「報酬処理」領域に注目した研究が増えている。しかし、「心の理論」に関連する領域と「報酬処理」領域がどのような機能的ネットワークを構成しているか、またそのネットワークの特徴がASDと関連するかは未解明である。本研究の目的は、計算論的アプローチを用いた脳イメージング実験とグラフ理論に基づくネットワーク解析を組み合わせて、「心の理論」と「社会的動機づけ」に関与する脳ネットワークを同定し、ASD患者と定型発達者で差があるかを検証することである。
研究計画の初年度である2019年度には、下記の知見を得た。
1) 「心の理論」課題遂行中の機能的磁気共鳴画像(fMRI)データ(健常成人40名分)の解析により、他者の内的心理状態を推測する課題に取り組んでいるときは、心の理論に関連する脳部位(前頭前野内側部、後部帯状皮質、側頭頭頂接合部など)の局所的賦活が高まる一方、これらの脳部位間のfMRI信号時系列の統計的依存性(機能的結合)は低下することが示された。
2) ASD患者と定型発達者を対象とした安静時fMRIのオープンデータ(Autism Brain Imaging Data Exchange, ABIDE)に対してグラフ理論に基づく解析を適用し、ASD患者ではデフォルト・モード・ネットワークの時間的変動が定型発達者よりも大きいことを見出した。デフォルト・モード・ネットワークは心の理論ネットワークとオーバーラップすることが知られている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

安静時fMRIの大規模オープンデータを活用することで、ASD患者の機能的脳ネットワーク動態に関する新規な知見を得た。ASD患者を対象としたfMRI実験は未実施であるが、2020年度中に実施する見込みである。

今後の研究の推進方策

2019年度の結果をもとに、今後下記の2点を検証する。
1) 安静時fMRIデータで観察されたASD患者におけるデフォルト・モード・ネットワーク動態の特徴が「心の理論」に機能的に関与するかを課題fMRIによって検証する。
2) 心の理論領域と報酬処理領域(線条体、前頭前野腹内側部)の機能的関連をネットワーク解析により明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

ASD患者を対象とした実験を2020年度に実施することになったため。

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公開日: 2021-01-27  

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