本研究の目的は、シェアリングエコノミーにおける信頼関係の構築に向けた情報共有や対人関係のあり方について明らかにすることである。コロナ禍前での大きな課題は、初対面である人同士が直接対面で顔を合わせるような状況での信頼関係の構築であったが、感染症拡大の影響で人々の社会関係のあり方が大きく変化している。 そこで、2022年度は2021年度に引き続き、本研究をコロナ禍への対応可能性を検討するために、コロナ禍における社会的ジレンマ状況に着目した研究を主に行なった。2020年度から継続して人と人が直接会うような状況における信頼関係の構築を想定した実験を行う計画であったが、直接対面することが推奨されない状況で行うと結果がかなり特異なものになりかねないことと、他者との信頼関係もコロナ禍前と異なっている可能性があるため、コロナ禍における人々の意識を把握しておく必要がある。 2021年度以降は、コロナ禍における人々の日常的な向社会的行動やそれに対する評価を測定するための社会調査を継続的に行った。2020年4月、2021年4月、2022年4月の3時点で同一対象者に対するパネル調査を行なった。調査では、日常的な外出行動や行動決定時の情報源、心理態度などを測定している。分析の結果、感染症拡大時の予防行動は社会的ジレンマに関する先行研究の知見と整合的な構造を持っている事、行動決定時の情報入手先としてソーシャルメディアが重要な役割を占めている事などが示された。 本研究を通じて、主にコロナ禍における社会的ジレンマ状況の確認や、行動決定時の情報接触について検証を行った。これらの結果は、シェアリングエコノミーの活用で必要となる他者との信頼関係の構築に向けて有用な知見をもたらしている。
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