研究課題/領域番号 |
19K14369
|
研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
矢澤 美香子 武蔵野大学, 人間科学部, 准教授 (40635710)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ワークライフインテグレーション / ワークライフバランス / 幸福感 / 認知行動療法 / 社会人 |
研究実績の概要 |
本研究では,ワーク・ライフ・バランスをさらに発展させた概念であり,仕事と私生活の統合を目指す「ワーク・ライフ・インテグレーション(Work & Life Integration:W & LI)」に着目し,W & LIを促進する個人の対処方略(心理的要因)と柔軟な働き方につながる組織の制度(社会的要因)との間の相互作用を明らかにしたうえで,W & LIを促進させる認知行動療法による心理的支援が社会人の幸福感の向上につながるかを検討することを目的としている。 本年度は,まず,研究1において,個人のW & LIを促進する個人の対処方略(以下,W & LI方略)についてまとめ,項目を選定した。続いて,研究2の予備的研究として,個人のW & LI方略と柔軟性のある働き方の有無(時差出勤、短時間勤務、フレックスタイム制、在宅勤務など),精神的健康の関連性について調査を行った。COVID-19の影響を考慮し,感染拡大前と現在(調査時点)での柔軟な働き方の実施の有無についても尋ねた。本研究の結果から,W & LI 方略は,精神的健康と正の関連を示した。加えて,W & LI 方略の得点は,柔軟な働き方を行っていない群に比べて行っている群の方が,また,男性に比べて女性の方が高いことがわかった。精神的健康の得点は,柔軟な働き方を行っていない群に比べて行っている群の方が,また,女性に比べて男性の方が高いことがわかった。これらのことから,W & LI 方略と柔軟な働き方の相互作用によって,精神的健康が促進される可能性が考えられたが,女性の精神的健康をより高める要因についても丁寧に検討していく必要があるといえる。今後は,これらの研究結果をふまえて,研究3にて,社会人を対象に,W & LIを促進する対処方略に焦点をあてた認知,行動的介入を行い,精神的健康やQOL向上に効果が見られるかを検証する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,COVID-19の感染拡大前に計画されたものであるが,昨年度,COVID-19の影響によって就労,家庭環境等に大きな変化が生じたことにより,調査の実施の時期,方法,内容について一時見合わせや再検討を行った。その結果,調査全体の進捗にやや遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
COVID-19の感染拡大により,就労や私生活における制約のある状況が続いており,経済面,心理面などにおいても不安定な状態が持続している。これらによって,研究の遂行や仮説検証に影響が生じる可能性があり,結果の解釈や考察には慎重さを要するといえる。 COVID-19の感染拡大後の影響を考慮したうえで準備された研究1の調査項目を基盤としつつ,内容を適宜精査,確認したうえで,引き続き,研究2の調査,研究へと進めることとする。また,本年度は,研究3のW & LI方略促進に焦点を当てた認知行動的介入プログラムの準備を進め,実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
社会的状況の変化を踏まえ,研究2の予備調査部分のみを行ったため,当初の想定の使用予定費用より小額となり,次年度への繰り越しが生じた。また,研究成果公表を行った学会大会がオンライン開催となったため,旅費等の支払いが生じなかった。 <使用計画> オンラインによる研究2の本調査費用ならびに学会大会における研究成果公表のための費用とする。
|