研究課題/領域番号 |
19K14371
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
土倉 英志 法政大学, 社会学部, 准教授 (00614637)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サードプレイス / コミュニティカフェ / 居場所 / 心理的居場所感 / 場 |
研究実績の概要 |
本研究はサードプレイスが機能する仕組みを明らかにすることを目的としている。2022年度は主につぎの3点に取り組んだ。(1)コミュニティカフェのフィールド調査、(2)心理的居場所に関する質問紙調査、(3)インタビューの分析、である。 (1)コミュニティカフェのフィールド調査を実施した。2019、2021年度は主にカフェのオーナーにインタビューに協力いただいたが、2022年度はカフェの常連の利用者にインタビューを依頼した。このインタビューにより、コミュニティカフェをオーナーの視点から理解するだけでなく、利用者の視点からも理解することを目指した。とりわけ、利用者にとってコミュニティカフェがどのような意味をもっているのかを検討することを目的とした。詳細な分析は今後進めていくことになるが、いわゆる一般のカフェの利用とは異なるユニークなかかわりが見られたり、カフェにたいする思いがあることが示唆されている。 (2)心理的居場所感に関連する要因を探索的に検討することを目的とした質問紙調査を実施した。この調査は、2021年度に準備を進めた複数の調査計画のうちの1つであった。この調査についても今後詳細な分析を進めていく。 (3)オーナーの語り(2019、2020年度に実施したインタビュー)を分析した。コミュニティカフェの運営はやりがいとともに語られることが多いものの、もちろん苦労がないわけではない。カフェの継続の秘密は、持続可能性に困難があるサードプレイスを理解するうえで重要な問題である。では苦労をともなう実践を支えているものは何なのだろうか。この問いに迫るべく1軒のカフェに焦点をあてて検討を行なった。その結果、経験を積み重ね変容してきた〈来歴を背負った身体〉と〈来歴を背負った場〉を見いだし、それらが分かちがたく結ばれていることで、いまの実践が支えられていることが示唆された(土倉,2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の広がりにより、当初予定していたフィールド調査の計画を見直す必要が生じた。そこで、問いを追究する別のアプローチについても検討した。これにより遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」に記した(1)コミュニティカフェのフィールド調査については、追加調査を予定している。また、調査を進める過程で、かつてサードプレイスだったにもかかわらず廃れてしまった場所や別のかたちで人びとの居場所になっている場所や活動についてヒントを得ることができた。たとえば、商店街、神社、子育て広場などを挙げることができる。サードプレイスは時代とともに、世代とともに変容していく。サードプレイスの過去と現在を理解するねらいから、補足的な調査についても進めていきたい。 (2)質問紙調査については、すでに実施した心理的居場所に関する調査は分析を進める。また、まだ実施できていないサードプレイスと人称性に関する調査は実施に向けて準備を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の広がりを受けて、フィールド調査を実施することができなかったこと、また、学会がオンライン開催になったために交通費の支出がなかったことが主たる理由である。フィールド調査と質問紙調査の実施を計画している。
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