研究課題/領域番号 |
19K14375
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
稲葉 美里 近畿大学, 経済学部, 講師 (70793975)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 社会的ジレンマ / 入れ子型集団 / 期待 / 集団間関係 / 内集団ひいき / ビッグデータ |
研究実績の概要 |
大規模で複雑化した現代社会においては、様々な集団が入れ子状に存在しており、それらの集団間で効率的な資源分配を達成することは重要な課題となっている。本研究は集団間の資源のトレードオフ問題を入れ子型社会的ジレンマとして定式化し、資源分配のパターンを決定づける要因を明らかにする。特に“他者の協力性への期待”と“内集団ひいき傾向”の2つの要因が、入れ子型の社会的ジレンマにおいてどのような資源分配を促進するかを、実験室実験を用いて明らかにする。 昨年度から開始したビッグデータを用いた解析結果を論文として発表した(稲葉ら, 2022; 大平ら, 2022; 大林ら, in press)。これらの研究では、大規模化した集団状況で、人々の協力性がどのように時系列的な変化をするのか、またその背景にある行動原理をテキスト解析やシミュレーションという複数の手法をもちいて検討した。その結果、同一の社会的ジレンマ状況に直面した場合に、その状況を互恵的な状況、自己利益を追求する状況、一方的に協力すべき状況など、人によって異なる状況と定義していることと、その割合によって社会的ジレンマでの協力状況が維持される可能性があることが明らかになった。この研究成果は集団間の資源のトレードオフについては分析出来ていないが、大規模化した現代社会における協力の問題について、現実のデータを用いた検証を行ったという点で意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は昨年度に実施した実験を引き続き実施し、サンプルを追加する予定であった。しかし途中で役8ヶ月間研究を中断したため、今年度も十分なサンプルを得ることは出来なかった。そのため、次年度に引き続きサンプル数を足す予定である。また、今後十分にサンプルを得るために、より広範囲に参加者を募集すべく、所属学部等の関係各所への依頼を行った。単一集団の状況で期待が持つ効果を検討する実験について、サンプル数を追加する。平行して、集団間の資源のトレードオフを導入した実験の準備を行い、データを収集する。二つの実験の比較から、集団間の資源のトレードオフ状況で期待が果たす機能がどのように変化するのかを検討する。 また、当初実験結果に基づいてシミュレーションを実施する予定であったが、上述のように実験の結果を得るに至らなかったため、シミュレーションに着手することが出来なかった。 代わりに次善の策として、昨年度に着手したビッグデータを用いた解析について、3本の論文が発表、または雑誌への掲載が確定した。その他にも集団における協力を達成するために、制度へのコミットメントが重要であることを示した論文も雑誌への掲載が確定した。このように、これまでの成果を発表し、一定の成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度単一集団の状況で期待が持つ効果を検討する実験について、サンプル数を追加する。平行して、集団間の資源のトレードオフを導入した実験の準備を行い、データを収集する。二つの実験の比較から、集団間の資源のトレードオフ状況で期待が果たす機能がどのように変化するのかを検討する。また、実験で明らかになった集団間の資源のトレードオフ状況における人々の行動のパターンに基づき、相互作用の結果生じるマクロ状況に集団構造がどのように影響するのかを、シミュレーションを使って明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
約8ヶ月にわたって出産・育児のために研究を中断したため、実験実施回数が減少し、謝金として使用する金額が減少した。また、上記の理由で遠方の学会への参加が困難になったため、旅費として使用予定だった予算を使用しなかった。 次年度は、本年度に予定していた実験の実施を試みる。大学生を対象とした実施にこだわらず、一般人の募集や調査会社の利用などの代替の手段を用いる場合は、必要経費が上昇する可能性が高い。
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