研究実績の概要 |
反復作業や重い荷物を運ぶ作業時の身体的な負荷の軽減や事故防止を目的として,パワーアシストスーツの導入が進んでいる。その導入は,筋・骨格系の障害リスクの低減につながることも示されており(de Looze et al., 2016),今後ますますさまざまな企業・文脈での導入が増大する可能性がある。 将来的にパワーアシストスーツの導入が進むことで,副作用が生起する可能性も考えられる。具体的には,ロボット・機械は人間とは異なり,喜びや痛みを感じない非人間的な対象と認識される(Gray et al., 2007)。装用品の印象は,その装用者に対する印象評価に影響するため(Leder et al., 2011),パワーアシストスーツを着用した個人は,人間というよりは機械と同じく物体化されて認識されるかもしれない。 パワーアシストスーツを着用した作業者が機械のように物体として認識されるかどうかを検討するためにオンライン実験を実施した。実験の参加者は,パワーアシストスーツを着用して大きな荷物を運搬する男性または女性作業者の画像 (統制としてそれらの作業者のパワーアシストスーツ非着用画像) をみて,Mind Perception尺度(上出他, 2017)ないし機械らしさ・人間らしさを測る尺度(Andrighetto et al., 2017)を用いて評価を行った。 実験の結果,パワーアシストスーツを着用した作業者は,外見的な機械らしさが高く,人間らしさは低く評価されることが示された。その他,ネガティブな感情を経験する能力 (空腹を感じること,苦痛を感じること等) が低く評価されてしまうことが示された。また反対にポジティブな感情を経験する能力 (喜びを感じること,願望を抱くこと等) は高く評価されることが示された。
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