共感覚とは、文字や音に色のイメージがあるなど、複数の感覚や認知が同時に感じられる現象である。共感覚は人口の約1%に見られることが知られているが、近年の研究においては一般的な成人においても、文字と色との間に弱い連関(色字対応) が見られるなど、共感覚に類似した対応付けがあることが明らかになってきた。これまでの研究から、文字に対して色などの具体的なイメージを割り当てることにより、意味理解が助けられる可能性が示唆されてきた。本研究課題では、学習と色字対応との関係を調べることを目的とし、以下に示す<実験1><実験2>の2つの実験を計画した。 <実験1>では、特に小学生の漢字学習に着目した。漢字の読み替えの学習と色字対応との関係を明らかにすることで、学習の色字対応への影響を示すことを目的とした。初年度に行った小学生184名を対象にした調査について、昨年度に引き続き分析を行った。その結果、学習の進度にかかわらず、色字対応は時間的安定性・回答内容ともに有意な変化が見られなかった。これは当初の仮説とは真逆の結果であり、解釈と考察に時間を要し、現在も論文執筆を行っている状況である。色字対応が発達・学習に影響を受けにくいという結果は、漢字のように学年ごとに新しい読みを学習し、文字の持つ意味が変化していく場合であっても、第一義的な意味が支配的であることを示唆しており、色字対応の形成に重要な意味を持つ結果である。<実験2>として計画されていた数学者に見られる共感覚的傾向については、仮説を支持する結果が得られ、現在は論文投稿準備を行っている。
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