研究実績の概要 |
学習方略は学業達成を規定する重要な要因であり,学校現場では,どのように学習するかという「学び方(学習方略)」についても指導することが求められている。教育心理学研究では,学習者の領域知識や認識論的信念,学習観などの認知的要因が,学習方略の使用に影響を与えることが示されてきた。一方で,学習者が学習中に経験する感情にはあまり注意が向けられてこなかった。 本研究は,感情と学習方略使用の関連を検討することに加えて,その関連を調整する要因について検討することを目的としている。しかし,国内では,学習中に経験する感情を測定するための尺度が限定的であるという問題がある。そこで本年度は,児童用の達成関連感情尺度(Achievement Emotions Questionnaire-Elementary School; AEQ-ES, Lichtenfeld et al., 2012)の日本語版を作成した。また,作成した尺度の妥当性の外的な側面の証拠について検討するために,自己効力感と課題価値,学習動機づけ,学業成績との関係について検討した結果,先行研究や統制-価値理論(control-value theory; Pekrun, 2006)と整合的な結果が得られた。さらに,横断調査によって,児童の達成関連感情と学習方略使用の関係について検討した。その結果,楽しさは深い処理の方略と正の相関,浅い処理の方略と負の相関を持ち,不安と退屈は深い処理の方略と負の相関,浅い処理の方略と正の相関を持つことが示された。
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