本研究の目的は,時間管理能力の発達過程と,その促進要因に関する一連の研究を通して,「児童生徒の時間管理能力を育む方法」を提案することであった。 1.時間管理の発達過程に関する研究 児童生徒の時間管理能力を測定する尺度を開発した。尺度の項目について因子分析を行なった結果,目標設定・優先順位,生活リズムの確立という2因子が得られた。これらの2因子と年齢の関連を検討した結果,いずれも弱い相関であることがわかった。次に大学生に対して想起法による調査を行なった結果,時間管理を学ぶ機会は中学,高校の時に多いこと,時間管理について学ぶ相手は母親や学校の先生が多いことが明らかとなった。そして,時間管理に関して学んだ内容を分類した結果,①プラニンニング,②モニタリング,③時間の活用,④他律的な時間管理という4種類が得られた。成人の時間管理に比べ,他律的な時間管理というこの時期に特徴的な時間管理の様態が見られた。 2.時間管理の促進要因に関する研究 親など他者からの時間管理支援が時間管理の促進要因として働くかを検討した。まず時間管理支援は,①目標設定の支援,②自律性の支援,③動機の支援,環境面の支援の4因子に分類されることが分かった。子どもの時間管理への影響を検討した結果,子どもの生活リズムの確立に対しては,親による目標設定の支援,自律性の支援,環境面の支援が正の影響を及ぼすことが明らかとなった。また,子どもの目標設定・優先順位に対しては,親による目標設定の支援,動機の支援が負の影響を及ぼすことが明らかとなった。また,親子のペアデータを複数時点で測定し分析した結果,発達の各時期において時間や時間管理に対する認識が親と子で違いが見られることも明らかとなった。これらの結果は,自律的な時間管理を促す親の関わりと,過剰なコントロールについて示唆を与えるものであった。
|