研究課題/領域番号 |
19K14390
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石岡 良子 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特任講師 (30710032)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高齢者 / 青年期 / 成人期 / 認知機能 / ライフコース |
研究実績の概要 |
本研究では,青年期から高齢期における認知負荷の高い活動を定量化する方法を作成し,それらと高齢期の認知機能との関連を包括的に検討することを目的としている.本研究の方法は大きく2つある.1つは,認知負荷の高い活動を定量化するための新規調査の実施.2つめは,保有データの解析により認知負荷の高い活動と高齢期の認知機能との関係を検証することである.2019年度に実施した研究の成果について,以下の3つに分けて説明する. 1つめは,青年期の家庭や学校での生活環境を定量化することを主な目的とした,郵送法によるアンケート調査を実施した.2020年1月末,1179名(75歳以上の都市部在住の後期高齢者)にアンケート調査を依頼した.対象者の青年期が戦前から戦後初期に該当するため,戦争の影響を尋ねる項目,活動内容を自由記述で回答する項目等を含めた.4月上旬時点で,448名からアンケートへの回答があった(暫定回答率38%). 2つめは,家事,仕事,余暇活動の保有データを整理し,教育歴,仕事,余暇活動の指標を用いて,高齢期の認知機能との関連について分析を行った.その結果を2020年度アメリカ老年学会の大会へ投稿した.そして,本分析結果を論文として執筆している. 3つめは,日本老年社会科学会第61回大会にて「後期高齢者の認知機能の経時的変化の個人間差」についてポスター発表を行った.1)後期高齢者の認知機能の加齢変化が領域によって異なるか,2)それらの加齢変化に個人差が存在するか,3)その個人差は,基本属性と関連するかについて,潜在成長モデルを用いて分析を行った. 本研究を通じて,生涯にわたる活動の定量化方法の妥当性,各ライフステージの生活環境間の関係,生活環境と高齢期の認知機能やメタ認知との関連を明らかにする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,1)新規調査の実施,2)保有データの解析の両輪で研究を進めている.1)新規調査では,計画段階ではアンケート調査の前にインタビュー調査を実施する予定であったが,文献調査や議論を重ねた結果,自由記述の回答欄を設け,アンケート調査を先に実施する判断に至った.アンケート調査で得られた量的データと自由記述の回答結果を分析し,より目的を絞ったインタビュー調査を今後実施したい.保有データの解析については,当初の計画通り,データ整理及び分析を行い,学会発表への投稿,論文執筆を開始できた. 以上より,2019年度の進捗はおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,2019年度に実施したアンケート調査結果に基づいてインタビュー調査を計画していたが,新型感染症拡大にともない,インタビュー調査を開始する時期が見通せない.また縦断研究の会場調査も当面実施が難しい.そのため,本研究の今後の推進方策は下記のとおり設定する. まず,2019年度実施のアンケート調査の入力済みデータの分析を進める.キャンパス閉鎖が解除されれば,残りのデータ入力を進める.インタビュー調査については,実施するとすればどのように実施するのか,あるいは代替方法として別の調査を計画するのか検討する. また並行して,保有データを用いた分析結果を論文執筆し投稿する.そして,女性のライフコースに着目した家事仕事に関する分析を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年11月のアメリカ老年学会への旅費を計上していたが,授業の都合上キャンセルせざるを得なかった.そして,2020年3月末に研究打ち合わせ旅費を計上していたが,新型感染症拡大状況にともない中止となった.データ入力補助及び分析補助の人件費として使用を計画している.
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